第29話

な~んでっ!今日も居ないのよっ!!


また空振りじゃないのっ!


別に番のメスがくれるご飯に不満は無いわ。


でも、でも、なんで狩りが出来ないのよ。つまらないじゃないのっ!


あぁ~、もうっ!


『な~に叫んでんだ?おめぇ。俺の縄張りだぞ?出てけ?』


なによ、あんたっ!私は、むしゃくしゃしてるのよ!


『なんでだ?ここは俺の狩場だもん、なんでおめぇがむしゃくしゃすんだ?』


あんたが、小さいのを狩りつくしちゃってるのね?私の分も残しておきなさいよ!!


『無茶言うな?俺は、ここの人間に雇われてんだ。仕事なら、きっちりやるべきだろう?』


雇われてる?どゆこと???


『死にかけだった俺をここの人間が拾ってくれて、寝床や便所にメシもくれる。んで、それの対価としてここのネズミを退治するんだ。それが俺の仕事だ』


ふ~ん。でも、トラ太は、ここで小さいの…ネズミ?が、狩れるって言ったのよ。


だから、来たのに。


『トラ太?太っちょのオスか?そいつは、俺の前にここでしばらく狩ってたみたいだな。人間が言ってた。でも、狩りすぎて太って狩りが出来なくなってどっかに言ったって言ってたぞ?』

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