日々狩り日誌〜MMORPG古参おじさんが仕様把握しまくってVRMMO世界を攻略するよ〜
千夜逢
日々狩りとおじさん
第1話[数十年ぶりの故郷]
◆
オンラインゲームの醍醐味は何だと思う?
俺の場合はアイテムを収集して回る事。集めたアイテムには大抵その時の思い出が詰まっている、何よりの宝物なんだ。
そんな俺はこの世界で冒険を開始して以来、俺はアイテムが沢山持てるようになるスキルツリーを偏って取得し続けている。通常30枠持てるのを、今し方120枠まで持てるようになった所だ。つまり、歩く倉庫のようなプレイヤーキャラである。
戦闘がメインのゲームには意味が薄い生活用のスキル……。イベントアイテムを収集して思い出を持ち歩こうと増やしていた大量のアイテム枠が攻略する手札になるなんて、この時はまだ俺を含めてどのプレイヤーも知り得なかったのだ――。
◆
多人数同時参加型のオンラインゲームが登場してから数十年程が経った。
ゲームから離れていた数十年の間に、パソコンではなく専用の機器を使った、所謂VRMMOが主流になっていた。
そして
あくまでも自分から仕事を辞めただけだからな。ここ重要だ。
「やっぱ居るべきはオンラインゲーム世界だよなー」
最新のVRの機器を身につけた俺は、おじさんながら子供心に駆られつつ最低限の設定を颯爽と終えてゲームを起動する。
【——
最新鋭の、脳と直接感覚をリンクするタイプの機器。見知ってはいたがいざ体感してみると、思ったよりも自然な夢を見ているような感覚で落ち着きがある。
アバターを作り終わり、今し方手や足を動かす簡単な設定を兼ねたトレーニングが終わって最初の街に転送されるようだ。
このゲームは「
最新鋭システムを使ったVR多人数同時参加型RPGはすでに存在しているが、このゲームの特徴は何より、今まで過去に存在したMMORPGをAIに再演算構築させて作られた物だという事だ。つまり、システムも含め現在のトレンドを無視して構成されている。
古き物をベースに新しい物が混同した、ある意味異端のゲームといった評判だ。
その特有の雰囲気が、MMORPG黎明期の世代を唸らせていると言う。
かく言う俺も黎明期はとにかく夢中に学校へいかず引きこもってパソコンに向かい、延々とフィールドのモンスターを倒し続けたものだ。嗚呼、なんて暗い我が青春……。でも最高の日々だったなあ……。
などと考えているうちにローディングされ、目の前に街が広がる。それはとてもグラフィックとは言えないリアルな光景だった。
いや、もうすでにこの世界に脳と体が馴染んでいるとも言えるのか。
◆
ログインに成功して、目に入って来たのは噴水のある広場だ。夕焼けの日がオレンジ色に照らす、石造りで出来た要塞のような街に、鍛冶屋が剣を打つ音が遠くから響いてくる。
初めて見た街の光景だが、昔MMORPGで出会った人や、過ごした時間を少し思い出して感傷に浸ってしまう。
「うぉおなんじゃこりゃー! いくかあ!」
長いゲームの旅路へ意を決して動き出したこの時、つい口にした発言は自分のキャラクター頭上にチャットテキストとして表示され、音声としても発されている事など知らず、この世界へ一歩を踏み出したのだった。
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