憧れの宇宙へ

@kenken48555

第1話

 僕は幼い頃から宇宙に興味があった。

 両親から読んでもらった星に関する絵本をきっかけに、惑星や宇宙空間についての本をたくさん読んでいた。

 いつか僕も宇宙に行きたいと思い、小学校へ入学する前にお母さんへ宇宙に行くにはどうしたらいいのか聞いてみたことがあった。

 

 「お母さん、僕宇宙に行ってみたい。どうしたら宇宙に行けるの」

 「そう、あなたは幼い頃から宇宙に興味があったものね。宇宙に行くには宇宙飛行士っていう職業につかないといけないのよ」

 「そうなんだ、宇宙飛行士ってどうやったらなれるの」

 「お母さんも詳しくはわからないけど、とても難しい試験を受けてその試験をクリアしないとなれないんじゃなかったかしら」

 「なら僕、その難しい試験をクリアして宇宙に行くんだ。どうやったら試験を受けられるの」

 「あなたの歳ではまだ試験受けられないわよ。大きくなってもまだそう思えてた時に行けるように勉強頑張ろうね」


 それから僕は宇宙飛行士になるには、宇宙飛行士選抜試験を受験して突破する必要があることを知った。

 その試験がとても難しく、突破した後の訓練も大変なものであるということも併せて知ることとなる。

 それでも僕は宇宙に行きたいと思い、小学生から宇宙飛行士選抜試験を突破することを目指して努力を重ねてきた。

 勉強はもちろん、宇宙飛行士に必要となる体力をつけるためにトレーニングも続けてきた。

 両親はもちろん、周囲の友人達にも恵まれたこともあり勉強やトレーニング以外にも楽しい青春を過ごすことが出来た。

 

 そして僕は大学生になり、ついに大学を卒業する歳になった。

 ある日、小学校時代からの友人に飲みへ誘われたので僕は待ち合わせ場所へ向かい、友人と合流した。


 「久しぶりだな」

 「そうだね、成人の集まりであって以来になるね」

 「そんなに会ってなかったか、いろいろ話したいこともあるし一先ず店に入ろうぜ」

 「了解だよ、店は任せてよかったんだよね」

 「おう、予約済だから大丈夫だぜ」


 友人が予約した店に到着して席に通された後、それぞれ飲み物とつまみを注文し終えた。

 そして注文した品が到着してから友人と僕は乾杯をして飲み始めた後、友人が言いにくそうに話し始めた。


 「そういえばお前、まだ宇宙飛行士を目指して頑張っているのか」

 「うん、まだ宇宙飛行士を目指して頑張ってるよ」

 「なら、あのニュースももちろん知っているよな」

 「ああ、従来の宇宙飛行士選抜試験が廃止されるんだってね」

 「やっぱり知ってたんだな」

 「目指していた試験なんだからもちろん知っているよ」


 実は僕が目指していた宇宙飛行士選抜試験は従来の形式を廃止して、民間企業に宇宙飛行士育成を委託する方針へと切り替えていた。

 これまでよりも宇宙開発が進んできており、民間企業にもその技術が開示されてきたことで様々な企業が宇宙開拓に力を入れ始めてもうすぐ10年となる。

 国として宇宙飛行士を選抜するのではなく、民間企業ごとに宇宙飛行士を育成すると国が発表したのは昨年末頃のことだった。


 「じゃあ、お前は宇宙開拓に力を入れている企業へ就職することにしたのか」

 「うん、国内でも一番宇宙開拓に力を入れている企業から無事に内定もらえたよ」


 そして僕は国内で一番宇宙開拓に力を入れている企業から内定をもらい、この春から勤務することになっている。

 もちろん宇宙開拓事業の職員として、宇宙飛行士候補生としての採用である。


 「そうか、よかったな。ずっと昔からの夢だったもんな」

 「ありがとう、やっと宇宙に行くための第一歩を踏み出せるよ」

 「まさかここまで夢を追ってちゃんと叶えるなんて、驚きといえば驚きだな」

 「そうかな、僕としては何が何でも叶えるつもりだったからむしろ拍子抜けかも」


 僕は大学卒業後、研究職として就職して実務経験を積むか大学院へ進学して研究を続けるかと考えていた。

 そうして実務経験を積んだ上で選抜試験を受けるつもりでいたのだ。

 予定よりも早く宇宙飛行士になれる可能性が出てきて嬉しい限りだが、ずっと宇宙飛行士選抜試験に向けた準備を進めていたので拍子抜けでもある。


 「ずっと試験に向けて頑張り続けてたもんな」

 「そうだね、宇宙に行くためにはまだまだ頑張らなきゃいけないから就職してからも精進しなきゃ」

 「お前がそんな感じだったから、これまでたくさんの女子が玉砕してきたからなぁ」

 「確かに彼女達には申し訳ないとは思うけど、僕の一番の目標は宇宙に行くことだから仕方ないかな」

 「そう思えるお前が羨ましいような妬ましいような……」

 「君だってモテないわけじゃなかったよね、前に会ったときは彼女を紹介してくれたじゃないか。彼女は元気にしてるのかな」

 「あいつも元気にしているよ。けど俺にとってあいつが初めての彼女なんだからモテてたわけじゃないだろ」

 「それはきっと認識の違いだね……」


 僕は友人とくだらない会話を楽しみながら、考えていたよりも早く夢をかなえられそうになっていることが思ったよりも喜んでいることに気付いた。

 拍子抜けではあったが、これからも努力を続けていこう。

 幼い頃からの憧れの宇宙へ行くために。

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