第5怪 港前攻防戦
「すげえ……」
ソフィアと
あいつらが俺たちを怪人と呼ぶかよ。お前らの方がよほど怪物じゃねぇか。
あれよりはまだ、エミとパイナップル頭の戦いの方が人間らしい闘いだ。なにせ、一応俺にも見てわかるからな。
「くそがっ!」
当初の余裕はどこへやら、エミの息を突かせぬ変幻自在の猛攻に今やパイナップル頭は防戦一方となっていた。
エミだけではない。俺たち白夜も若干、
そして、ソフィアと
「どうなされました? 息が上がっているようですけれど?」
余裕の表情で汗一つかいていないソフィアと、苦しそうに肩で息をしている
「五月蠅ぇ! 余計なお世話だっ!」
吠える
「大方、遊び呆けて鍛錬を怠っていたんでしょう。その奥の手を使っても、今の貴方ではわたくしの相手にはなりえませんわ。大人しく、部下を連れて尻尾を巻いて引きなさい」
諭すようにソフィアは告げる。
「このクソアマぁ……」
奥歯を噛みしめながら、悪鬼のごとき形相でソフィアを睨んでいたが、遠くから近づいてくるけたたましくなるサイレンを耳にしてニタリと笑う。
「そうでもねぇようだぞぉ? ほら聞こえんだろ? あの中には【ネームド】も多数混ざっている。到着すれば俺らの勝利だ」
そして自信満々に宣う。
【ネームド】。
高位の人外はこの世界に長時間留まる事ができない。その異界からの人外たちをこの世界に留め置く依り代として用いられる武器であり、あれらにより詠唱なしで固有の能力を発現できる。あれこそが、
「その前に終わらせればいいだけです。お願い、ルナエル」
その言霊を契機に、ソフィアの目が金色に染まり、その全身が黄金の光を纏い始める。
「けっ! そこまで俺はヘボじゃねぇよ。時間を稼げ、ヒュドラッ!」
「ギプスっ! 退避をお願い!」
ソフィアが重心を低くして長剣を構えながら、側近らしき金髪の優男に声を張り上げる。
「承知! ガム、彼らを護衛しつつ、我らの船舶まで一足先に帰り、出向の準備を急がせろ。我らもこの場の全員の退避が完了したらすぐに向かう」
金髪長身の優男ギプスが、俺たちを警護してくれていた小太りの男に指示を出すと、
「
敬礼をして俺に視線を向ける。
流石にこのまま、依頼した俺たちがソフィアたちに丸投げしてツムジちゃんたちを残して逃げるわけにもいかない。最後まで責任は負うべきだろうさ。
「
エミにそう叫ぶ。ちなみに、
エミは苦虫を嚙み潰したような顔をしていたが、
「わかったわ。でも必ず戻ってきなさいね」
有無を言わせぬ口調で、らしくもなく俺の安否をねぎらってくる。
「おう!」
俺もエミの右手を上げて答えた。
もちろんだ。だって、俺にはイヴがいる。そう長い間、家を空けるわけにはいかねぇからな。
「ついてきてくれるの!?」
喜色満面の顔でツムジちゃんが身を乗り出して尋ねてくるので、
「ああ、途中までだがな」
頭を撫でつつ大きく頷く。そうは言ったが、怪人の俺がエルドラの船舶内に乗るのはご法度だ。いくらエルドラが怪人に寛容だといっても、後々、迷惑がかかることになる。彼女たちを船まで送り届けたらすぐにこの戦場を離脱するさ。
「いくぞっ!」
小太りで年配の男、ガムが促して走り出し、俺たちもそれに続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます