第7話 竜王様、自宅をリフォームする。ついでになんか不死王が復活する
悲報その2。
我が家が崩壊した。
「いやいやいや。えぇー……」
私は瓦礫の山となった家屋を見つめる。
崩れたせいで床の下の真っ黒な土と、柱の土台に使われたであろうでっかい岩までむき出しになっている。
「……なにこれ?」
でっかい岩にはなにやらボロッちい紙が貼りついていた。
なにやら変な魔力を感じるが、ひょっとして家がボロボロなのはこの魔力のせいなのでは?
うん、多分きっとそうだ。決して私がドアを壊したからではない。
「……汚いし、剥いじゃえこんなもんっ」
イラッとした私は岩に貼られていた紙をべりっと剥した。
すると周囲がカタカタと揺れ出した。こんな紙一枚剥いだくらいでここまで揺れるなんてやっぱりかなりガタがきていたみたいだ。
「あー、これ駄目だな。流石に修理しないと」
ていうか先程よりも黒い土が湿っている。
泥みたいにポコポコしてるし、黒い煙がもやもやと漂っているではないか。
うへぇー、ばっちぃ。
『■■■■■■■■~~~~~ッッ!!!!!!』
「ん? なにこの人形?」
こんな所に骸骨の人形なんてあったっけ?
いつの間にやら、私の後ろには骸骨の人形 が浮かんでいた。
骸骨の人形は真っ黒なフードを被り、でっかい草刈り鎌みたいなのを振り回している。
『■■■■ッッ! ■◆◆■■■~~~~ッッ!!!!』
「あ、分かった。ひょっとしてここ、アズサちゃんの世界にあったお化け屋敷ってやつかな?」
どろどろした雰囲気とか、ボロボロの家屋とかいかにもそれっぽい!
郊外にあって手入れもされてないし、廃棄されたテーマ―パークのお化け屋敷ってやつなのだろう。うん、それならボロボロなのも納得だ。
「てか、危ないよ。いくら脅かすためとはいえ、こんなの振り回しちゃ」
私は骸骨の人形の鎌を取り上げてぽいっと捨てた。
『……ッ!? ■、■……? ? ? ?』
骸骨の人形は私と地面に転がっている鎌を交互に見る。
人形など放っておいてさっさと家屋の修繕作業に取り掛かるか。
「うーんまずは掃除かなぁ 。修理するにしてもこのままじゃ汚いし。
――
『■■■■■~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!???』
次の瞬間、周囲に漂っていた埃や汚れが綺麗さっぱりなくなった。
うん、どうやら魔法は問題なく使えるようだ。
魔力水晶のように私の魔力を直接出力するのではなく、自分を極限まで弱体化させ、魔力を希釈し、この世界のフォーマットに併せた魔法で出力すれば世界は崩壊しないようだ。
これを応用すれば、元の姿にも戻れるかもしれない。後で試してみよう。
「……ん? あれ? あの骸骨人形どこに行った?」
さっきまでそこに居たと思ったんだけど?
ついでに足元から何かが消えるような気配がした。
「お、真っ黒だった地面が綺麗になってるじゃん♪ ラッキー」
へぇー、浄化魔法ってこっちの世界だと地面にも効果があるのか。
これならしっかりとした柱を打ちこんでも大丈夫そうだね。
てか、一瞬黒いモヤが見えたような気がしたけど……別にどうでもいいか。
「次に壊れた柱やドアの修理だね。――
壁や床、屋根や家具など、この周辺を指定して時間を巻き戻す。
映像がどんどん逆再生されるように家や家具が新品の姿に戻ってゆく。
え? どうせ巻き戻すなら浄化魔法は必要ないだろって?
いやいや、そこがまた違うんですよ。埃や汚れを先に綺麗にしておかないと、それも含めて時間が戻ってしまうのです。
つまり新品なのに汚れや埃まみれというちぐはぐな状態になってしまうのだ。
ぶっちゃけると、どっちが先でも結果は同じだけど、汚れが酷かったから先に綺麗にしたかったってだけだけどね。
『……? ■、■■■……?』
あ、骸骨人形が居た。
なにやらキョロキョロと己と周囲を見回して首をかしげている。
どうしたんだろう? まるで急に消えた自分がまた元に戻ってるみたいな驚きようだ。
「ま、こんなもんかな。あ、修理終わったし、はいこれ。返すね」
『………………』
私は骸骨人形に鎌を返す。
骸骨人形は茫然と私を見つめている。
「というか、もしかしてこれ人形じゃなく生きてるのかな?」
アズサちゃんの居た世界では物には魂が宿るらしい。付喪神ってやつだ。
ずーっとこのお化け屋敷で誰かを脅かしてきたこの人形も、長い年月の中で意思を持ったのかも。
そう考えるとちょっと可哀そうだな。
「……寂しかったでしょ。ずーっとここで独りぼっちで」
『……』
骸骨人形はこくりと頷いた。そわそわと落ち着かない様子でどこかを見つめている。
「どこか行きたいところがあるの?」
『……』
骸骨人形はこくりと頷いた。
ひょっとして別のお化け屋敷だろうか? こんなになってまでまだ働きただなんて心底尊敬する。なんという勤勉精神なのだろう。
「凄いね、そこまで頑張るなんて私には出来ないよ」
『……?』
「私もさ仕事、いっぱい頑張ったんだ。でも全然ダメでさ。私がいくら頑張っても喧嘩も争い事も全然減らないし、もう嫌になっちゃったんだ。だからしばらくはここでのんびり暮らす事にしたの。だから気が向いたら、またいつでもここに来なよ。たくさん驚かされてあげるから」
『……! ……!』
私の言葉に、骸骨人形はコクコクと大きく頷いた。
「あ、そうだ。その鎌貸して」
『……?』
私は骸骨人形から鎌を借りる。
「えーっと、ここをこうして――あとこれをこうっと」
「はい、これ。餞別代りにちょっとだけ性能良くしといたよ」
『……!? ■、■■■■♪ ■■■■■ッ!』
骸骨人形は凄く驚いて、だがとても喜んでくれたようだ。
「ははは、そんなに喜んでくれるとこっちまで嬉しくなっちゃうね。それじゃあね。お仕事、頑張ってね」
『■■■■♪ ■■■■■■■♪』
骸骨人形はそのまま空へ浮かび上り、何処かへと消えて行った。
「――さて、それじゃあ作業を再開しますか」
応急処置は終わったけど、まだまだ手を加えたいところはたくさんある。
なぁに時間はたっぷりあるんだ。少しずつ私好みに整えていくとしよう。
住居の自己流リフォーム……アズサちゃんの世界風に言えばDIYって言うんだっけ?
いいね。これぞ休暇って感じじゃん。
楽しくなってきたぁー♪
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