侍日本党

龍玄

第1話 自由党崩壊

 米国のカード元大統領のように良くも悪くもカリスマ政治家が居なくなった日本に神風が吹き荒れた。岸部総理は外交面で日本を導くも足元はガタガタ。自民党は裏金問題を発端に派閥政治が鳴りを潜め、力関係は地下に潜り更なる悪政がひかれるようになっていた。そこへ突如、現れたのが戦国武将たちの転生軍団だった。戦国武将の生まれ変わりたちは、生前の地に舞い降りて人気と認知度を活かして次々に当選。各地にはご当地で名を馳せた有名人がいる。その全てが当選していった。その背後には彼らを支援する商人の末柄やグループが集っていた。顕著だったのが大阪だった。大阪は一新の会が圧倒的な支配力を誇っていたがそこへ豊臣秀吉が現れ、おらが太閤さんと浪速の人気を搔っ攫い、秀吉の推す候補者ももれなく当選。大阪は大いに盛り上がり侍日本党が議席の大半を占めた。ここでも大手企業は秀吉人気に与かろうと支援に回り大阪に秀吉ありと全国にも知らしめた。他にも安芸の毛利輝元、熊本の加藤清正、御三家の水戸光圀など蒼々たるメンバーが揃っていた。転生に生前の時代など無意味。国民は立候補者に関して親しみを持つが何故か過去か現在かの時間的違和感が神仏の力によって制御されていた。

 彼らは結束を固めるためか神仏の計らいで記憶が残されているのか刷り込まれているのか侍魂で固く結ばれ、メンバーの証でもあるように腰に鉄扇を挿していた。その井出立ちは滑稽にも若者の間で人気を博していた。

 今の日本を憂い各領地で勢力を拡大していった。彼らはあれよあれよと日本国民の支持を得て自由民党の第一党の座を奪い取った。名を侍日本党。日本による日本のための政府を掲げ、媚びない、媚びさせない、媚びられないを謳い国民の人気を掌握した。

 総理大臣に織田信長、副総理に豊臣秀吉、幹事長に徳川家康、政調会長に本田忠勝、財務大臣に小西行長、外務大臣に伊達政宗、国務大臣に明智光秀、奉行大臣に石田三成など、各所に戦国時代に活躍した武将が名を連ねていた。


幹事長「総理、最近、我が国で異国の者が居座り、悪行を働いております」

総 理「そこは何処だ」

幹事長「江戸袋村で御座います。奴らは疲弊山の寺を占拠しおります」

総 理「して、どのような悪行か」

幹事長「政宗の調べでは観光を目的に入国し、そのまま就労している。不法就労者た

    ちであり、価格が安く仕事が粗い。婦女を誑し込み、または強引に従えさ

    せ、子を作り国籍や永住権を手にしている」

総 理「政宗を呼べ~」


 政宗は既に家康に呼ばれ、隣室で待機していた。


政 宗「お話は隣室でお聞きしておりました」

総 理「して如何する」

政 宗「自由民党時代に作られた在留資格を一旦一斉に撤廃し、新たなに設けるよう

    準備を進めております。それまでは暫定で継続させますが半年以内に施行致

    そうかと。総理に置かれましては我が法案を三成には事後承諾を受け入れる

    ようご配慮願いたし。更に異人に対する生活保護や医療保険の撤廃を踏まえ

    て整備しなおすことをご指示願わくば」

総 理「生活保護と医療保険とな」

政 宗「この国は搾取され、舐められておりまする。労働者不足に付け込み愚かな団

    体・組織の手引きを受け滞在し、数年働き、何かと理由を付け働くことを止

    め、生活できない死ねと言うのかと恫喝のような苦情を役人に押し付け、善

    意ある国民の納めた税を食いつぶしております。更に、高度な透析医療を只

    で受けるガンナ人もおりまする。日本人を守るための制度を悪用する者が後

    を絶たないのが現状。総理が生前傍に置かれていた彌助とは大違い。苦難か

    ら救われた恩義など微塵も感じさせず、温和な態度を見せれば図に乗って役

    人が拒否すれば徒党を組み人種差別だ、人権だと暴れる次第で手に負えない

    腹立たしさ」

副総理「どうも奴ら学問や人の道を教わらずに図体ばかり大きくなったようで、この

    国で育った者の常識を異国の者に当てはめても通じませぬ。見下すはよから

    ぬことでも同情・憐れみはその者のためにならず。まずは自らの力で対処す

    る思考を持たせねばなりませぬ。努力もせず他人の褌で相撲を取る事しか考

    えぬ甘えた者に差し伸べる手など必要ないかと」

総 理「家康・政宗の言う通り。人道とは人の道。人でない者は人でなし。物言う異

    国人ではなく苦しみ、不遇に耐え忍ぶ国民を救うのが第一。日本人が安心で

    きて暮らし、余裕があるならまだしも生活保護に甘える筋違いの者もおると

    聞く。人の道を説く事を学びの場で強化すべきことよな。うん、了解した、

    良きに計らえ」 


 そこへ三成が飛び込んできた。







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