第7話 知りたい心
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長い奴隷生活で衰弱していたサザナミだったが、めきめきと回復し、少年団の子どもらに混じって鍛錬までできるようになった。
鍛錬が終わり、騎士団の宿舎を歩いていると、前方に馴染み深い広い背中の男が目に入る。
「アキナ団長!」
「おお、サザナミか」
アキナはふり返って敬礼するサザナミの姿を認めると、サザナミの髪を勢いよくわしゃわしゃと撫でた。
なぜかアキナはサザナミが近寄ってくると、髪をぐしゃぐしゃに撫でるのであった。
「ちょ、やめてくださいよ。犬じゃないんだから」
「ああ、悪い。で、なにか用か」
「あ、はい」
瞬時に真面目な顔つきになった少年を見下ろし、アキナも黙って続きを待つ。
「失礼を承知でうかがいたいのですが、ユクスさまはなぜ俺に会いにきているのですか」
「は?」
思ってもない質問に、アキナは間抜けな声を出してしまう。
「なんか、あの人、あ、あの人とか言っちゃった……ユクスさま、もともとあまり外に出なかったんですよね。でも、さいきん、俺が騎士団の仕事をしているとたびたび呼び止めてくるんです」
「坊ちゃんとどんなことを話すんだ」
「いえ、なにも。なんか気まずそうな顔をして俺のことを見て、最後に必ず手を握って帰られるんです」
「なんだそりゃ」とアキナは笑う。
「俺が聞きたいですよ。でも勝手に質問をしていい立場にはないですから、ユクスさまが口を開くまで俺は黙っているしかないんです」
「そうかい」
「いったいなにが目的なのでしょうか」
「いやあ、それはね」
サザナミに真剣に見つめられ、アキナはついと目をそらす。
わが国の王子は友だちの作り方をしらないだけなんです、だなんで口が裂けても言えない。
「団長はご存じでないですか」
「知らないねぇ」とアキナはしらを切る。「本人に聞くしかないんじゃないの」
「俺から話しかけていいものなのですか。俺の国では、目上の人間に話しかけるのはご法度でした」
「アルバスもそうだけど、まあ、あの坊ちゃんはなんも咎めないよ。次会ったときに聞いてごらん」
な、と騎士団長はサザナミの頭を撫でた。
サザナミは不服そうな顔をして去っていった。
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