01-24 アミューズメントエリア
ロザン先生の第2の研究室から戻ってきた雅稀たちはキャンパスの東側の敷地へ向かおうと寮を出て、徒歩で建物を眺めながら歩いている。
改めて建物をじっと観察すると、
昔は木造で木の色をしていたが、57年前の襲撃事件で再建された今の建物は木造であることは同じだが、学生寮を除いてクリーム色をしている。
建物の配置も当時と少し変わっていた。
1番の違いは、キャンパスの東側にアミューズメントエリアが存在することだ。
南西に4棟の学生寮があり、森林に囲まれた30メートル程度の道を抜けると、講義を行う実習棟が8棟あり、程よい間隔で建てられている。そこは講義エリアと呼ばれている。
図書館棟は講義エリアの北東に存在する。
講義エリアから東へ歩くと、芝生エリアというキャンプ場を思わせる広大な芝生に建物が所はところどころ建っている領域へ辿り着く。
訓練棟と呼ばれる世界遺産に登録されている神殿のような小さな建物はそのエリアにあり、学生が講義で学んだ技やスキルを習得するために練習する場所だ。
さらに東へ進むと、大きな闘技場がある。
ここで魔法戦士の学生が試合を行うこともあれば、手品学科の学生が手品を披露するイベント会場としても使われている。
闘技場の東側に森林が広がっており、そこを突き進むと、アミューズメントエリアに着いた。
GFP学院が再建された時と同じ時期にできたそうだ。
芝生エリアも面積は広いが、アミューズメントエリアの方が敷地の広さは圧倒的だ。
一翔が言っていたように、ジェットコースターや観覧車などの定番アトラクションがある。
それだけでなく、ボルダリングをする場所やアスレチックも用意されている。
こんなに多くのアトラクションやアスレチックがあるのに、無料でテーマパークを思う存分遊べるという夢のような世界だ。
「すごい……日本にいたときのテーマパークよりも遊べるとは……」
雅稀はアミューズメントエリアを見渡しながら感動する。
「よしっ、まずはジェットコースターからだな!」
利哉は元気そうにジェットコースターの乗り場の方向を指す。
「良いよ」
一翔は苦笑いし、3人はジェットコースターの乗り場へ向かった。
「きゃーーっ!」
ジェットコースターに乗っている学生は叫びながら楽しんでいる。その様子を見ていると待ちきれない。
5分程待つと、3人の順番が回り、先頭車両に案内された。
初めて乗るというのに先頭か、と雅稀はドキドキしながら座る。
雅稀の右隣に利哉、一翔が並んだ。
「オレ、こういうの好きなんだよなー」
利哉の笑顔はキラキラ輝いている。
少し緊張している雅稀からすると、利哉はそういう風に見える。
ジェットコースターの座席が埋まると、発進した。
ガチガチガチ……と鈍い音を立てながらレールに従って高いところへ移動していく。
先頭であるが故、どのようにコースターが進んでいくかがわからず、雅稀はハラハラしながら空を眺める。
地上から60メートルの高さまで来ると、コースターは急降下し始めた。
「うわーっ!」
突然向かい風が吹いたかのように、雅稀の髪の毛が後方の席へなびく。
速くてくっきり見えないが、アミューズメントエリアで食べ歩きをしている学生や、ちょっとした売店がちらほら建っているのが見える。
隣に座っている利哉は楽しそうに笑っているのが右耳から自然に入ってくる。
ジェットコースターは急カーブや上昇、下降を繰り返しながらアミューズメントエリア全域を進んでいく。
このジェットコースターはアミューズメントエリアを一望できるように設計されているようで、やみつきになってしまう。
それに、芝生エリアを含め、西側にある建物は疎か地面も見えない。
現実を忘れて楽しめるのも、このジェットコースターの醍醐味だと雅稀は風に打たれながら感じた。
「いやー、先頭でどうなるかと思ったけど、面白かったー」
座席から降りた雅稀はストレッチのように両腕を伸ばす。
「やっぱ、テーマパークと言えばジェットコースターは外せないな!」ご機嫌の利哉の横で一翔は「ずーっと笑っていたよね」と微笑む。
「俺も利哉の笑い声が終始聞こえてた」
雅稀は笑いながら利哉に顔を向ける。
「ああいうスリルがたまんないんだ。そういえば、ジェットコースターからポップコーンを売ってる売店を見かけたんだ。行ってみようぜ!」
利哉は鼻歌を歌いながらその方向へ歩いて行った。
「おい、ちょっと待てよ」
雅稀は小走りして彼の後を追い、一翔も2人の後をついた。
「桜ポップコーン、3ビッツ……か」
利哉は残念そうな顔をする。
地球のように、日本では円だけどアメリカではドルというように、国によってお金の単位が違うということはない。
「ここの世界のお金ってどうやって稼ぐんだ……?」
雅稀は目を細めて腕を組む。
「魔法戦士の目線で言えば、階級を上げるか、大会やイベントに参加してある程度の成績を収めるとかかな」
一翔の視線はメニュー表の料金に向けている。
「それって、階級手当や賞金をもらうってこと?」
雅稀は一翔の真剣な顔を見ると、彼は黙って頷いた。
「アスレチックとかで、身体能力を高めて階級を上げろと言われているようなもんか……」
利哉の残念な表情は消えていない。余程そのポップコーンを食べたかったのがわかる。
「
雅稀は右手を腰に当てる。
「あっ、そうだった」
「何だよ。アミューズメントパークに浮かれすぎだろ」
思い出したかのように返事した利哉の顔を見た雅稀は思わず呆れてしまった。
「まあまあ、行ってみようよ。絶対楽しいよ!」
一翔は利哉を元気づけようと背中をさする。
3人はアスレチック場のあるアミューズメントエリアの北西側へ向かった。
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