あれからしばらくしてチームは編成が変わり、久保くんも結婚したという話が聞こえてきた。私はあの日の事を誰にも言わなかった。私にも気を持たせた節があったからだ。

「本当に！？ここで？」

久保くんとのことを話すと穂乃果は驚きと心配と、この家に不用意に男を侵入させた私への批判の入り混じった声を出した。

穂乃果と私はシェアハウスの流行りもあって、同居していた。入居時はお互いの親が相当反対していたものの、都会での一人暮らしに安心感とシェアハウスをするというドラマのような毎日に楽しみが増え、私達は浮き足立っていた。穂乃果名義で借りることで彼女には住宅手当が出て、家賃は折半なので穂乃果には金銭的余裕が、私には少し高い家賃だったものの仕事場に近くなり、家電を手放してしまっていたので穂乃果の家電を使えるというメリットもあった。婚活の話をしたり、仕事の愚痴を言ったり、忙しい世代だったからこそ家を行き来する必要のないシェアハウスは好都合だった。