第19話
数日後に久保くんが私を帰り道に誘った。彼は結婚を控えているらしいが、いつも馴れ馴れしく相変わらず自信家で気持ちの悪さがあった。彼といると仲谷さんに馬鹿にされている感覚がいつも湧いていて、この期待の若手である久保くんをたぶらかせば仲谷さんにある意味での仕返しができるのではないかと思っていた。橋本さんの話を仲谷さんの指示で聞き取りにきたんではないかと直感的に思った。橋本さんと仲谷さんは同期だ。なぜこんなにダメンズを侍らせたがるのか私にはわからなかったが、橋本さんはさっそく異動が決まってしまった。何をしたかは課長から仲谷さんの耳にも届いているだろうに。
久保くんは私の立案したことを実行する役目かのように、私達は仕事を共にしていた。ある日チャットで食事に誘うと、後ろからこれまた仲谷さんの手駒であるオニギリを擬人化したようなずんぐりとした体型の藤田さんがついてきて声をかけられた。「お前ら何してるんだ」そう声をかけられ、なぜかランチに入ったカレー屋で三者面談が始まる。「お前の婚約者に監視を頼まれてんだ、俺は」そう話す藤田は悪びれることなくカレーを頬張る。久保くんは笑っていたが、こちらも悪びれてはいない。私達はカレー屋を後にした。午後の仕事が終わると帰りに久保くんに誘われた。後ろから隠れもせず藤田さんがついてくるのが見えた。「まいてやろう」いつの間にか久保くんは、たぶらかしてやろうと画策していた私を仲間だと思っている。ラブホ街を通り抜け、カラオケに入ってしばらくすると、もういいだろうと大通りに出た。
私の家の前につくと、トイレを貸して欲しいと言われ、周りに借りれるところも無さそうなので仕方なく家の中に入れる。幸いにも玄関のドアのすぐ横にトイレはある。嫌な予感はしていたがドアを開けると、彼はトイレに行かずに私に抱きつき、無理矢理スカートに手を入れてきた。とっさに蹴飛ばして、その蹴りがみぞおちに入った彼は逃げるように帰っていった。
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