散歩 雨の日のアイスショー

つき

エッセイ

久方ぶりに、我が推しの出演アイスショーに出向いてみた。


私は、非推しのショーは、以前と違って全く観る気が起きないのだが、今回は身内がコネでチケットを取ってきたのだ。


どうも良席らしい。

では、と迎えの車で出発した。


駐車場が空いておらず、少し遠方のショッピングモールに停めることになった。

体力不足の私にとっては、かなりの距離を歩かなければならない。


思いがけない散歩タイムに、覚悟を決めて車を降りた。


雨の中を、カラフルな傘達がゾロゾロと会場へ向かい歩いて行く。


私は傘の花を眺めながら、雨の日に歩くのもまた、風情があるなぁ、などと呑気に感じている自分に気が付いた。


通常、推し絡みのショーでは、前日から動悸が止まらない。


現地へ向かう途中も、携帯での情報収集に余念が無く、気が休まらない。


殺気立ちながら、現地へなんとか到着すると、緊張が最高潮に達する。


本番中に至っては、心情的に推しと一体となって、あまりの興奮状態のピークに、もはや殆ど記憶が無いのだ。


帰宅後は、気力、体力共に、一気に疲れが押し寄せ、魂が何処かに抜けて、まるで試合後の明日のジョー状態である。


ご本尊の居ない、巨大看板を見に行くだけの時や、タイアップ商品購入などでも家を出発する時から同様だ。


バクバクと、心臓がどうにも止まらない。


それが今回はどうだろう。全く、緊張も気負いも無い、腑抜け状態である。


これが、実に好都合なのだった。


ショーが始まれば、安心して、いち観客として楽しめた。


例えるなら、自分の子供が卒園した後に、ふらりと見に行ったお遊戯会だろうか。

又は、子供の小学校卒業後の、運動会観戦か。


この様な安定した心持ちで、最前列ながらも、のんびりと気楽に観覧が出来た。


たまには、こんなショーも中々に良いものである。


fin


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

散歩 雨の日のアイスショー つき @tsuki1207

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ