第1話

 ──それは訴えていた。


 けれど幼少の私は分からなかった。フィクションと夢を同じものだと捉えていた無知な子どもであったのだ。


 故に。

 誰か見知らぬ少女の夢をみた。

 もしもの世界を夢みた。

 小さい頃、一生懸命に描いた未完成の作り話。

 だと思い込んだ。


 ノートの端に書いたその物語は、完結されないまま残っている。

 未だに完結のめどは立っていない。時間が経てば経つほど、あの幼い頃の素直な感性を失っていくため、思うような文章が書けずにいる。どうしても歳を重ねるにつれ、巧く書こうと綺麗な言葉を蛇足する。償いの為に、綺麗な最後を求めていた。頭を凝らして、目一杯想像した。

 今ではもう見れなくなった遠い日の夢。夜空に手を伸ばせば、応えるように夢を見せてくれた。その頃の私は欠かさず、毎日更新される夢物語を書き留めていた。


 思うに、あれは。

 暗闇の中を、ひとり光る星の切実な願い事だったんだと思う。


 少女は救われたくて、私を呼んでいた。けれど私は幼すぎたから、何も少女にして上げられなかった。ロマンチックな夢だと思い込んでいた。都合良く綺麗なお話しにしていた。


 それから歳月は過ぎ。今こうして、大人に近づいた私がいる。

 幼少より一回り知識を持ち、一回り物分かりが良くなり、一回り僅かな機微にも敏感になった。

 “そして”──────、


 君に会いに行ける。


 夜空を見上げて、手を重ねる。遅くなっだけど、君を連れ出す準備は万端だ。


 少女に会いに行く手段が出来た。

 “そして”の続きを語ると長くなるから、割愛させて貰うと、一言。


 使


 それだけ。




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