第11話 明日と花と俺と嫁(後)

俺が目を覚ましたら、白い天井が見えた。




まず、俺の視界に入ったのは、自分の足だ。


右足には、ぐるぐるとでかい包帯が巻かれていて、

宙に浮かんでいた。

右足は言うまでもなく、身体の至る所が痛んだ。



「お前さ。

お父さんに言われなかったか?

大事なことは、早く言えってな」



俺が話しかけた先は、ベッドの隣にある植木鉢だった。

そこには、3輪のピンクの花がゆらゆらと生えており、

その花の隣には、手のひら大の大きさの少女がいた。



「お父さん、いないです」



その少女は、まるで拗ねているような表情で、そう言った。



「でも次からは、言うです。

お前、悪かったです」


「名前、教えたと思うんだけどな……。

それに、俺がお前に名前付けたんだぞ。

俺が、お父さんだろ?」



俺がそう言うと、その少女は、にこりと笑いながら、

俺に言った。



「お婿さんでは、ないのですか?」



俺の顔が真っ赤に腫れ上がるのを俺は自覚した。

そして叫ぶ―



「お前!

何歳さだと思って―」




そう言って少し起き上がった俺に、折れた右足がズクリと痛んだ。


医務室に、俺の悲鳴がこだました。



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