第二章「伴侶」 第02話
「我は司書」
「……司書。え、司書? もしかして、
司書と聞いて連想するのは図書館。そして図書館といえば、
だが少女は首を振り、おもむろに私の胸の辺りを指で示す。
「えっと……私?」
「違う。でも、惜しい」
「……まさか、お嬢様の
懐疑的なアーシェの言葉に、しかし幼女は頷き、私に向かって手を差し出す。
「出して。
「う、うん」
不思議と逆らう気になれず、私は
胸元にふわりと浮かび上がるその様は、ここ数日で何度も見た光景。
しかし、それを取ろうと伸ばした私の手は空を切り――
「「あっ」」
私とアーシェの声が重なるが、少女は気にした様子も見せずに
そこにあるのは、一ページだけの本文。少女はそれをペラッと
「――っ! この子が特別であるのは、間違いないみたいですね」
本来、
だが彼女は間違いなく、私の
「司書は資格ある者に神から遣わされる。あなたは認められた。誇って良い」
淡々と告げられたその言葉にアーシェが息を呑み、興奮したように身を乗り出す。
「そ、それはつまり、あなたは
「厳密には違うけどそんな感じ。司書は
言葉を失うアーシェとは対照的に、随分と適当な感じであっさり告げられた。
「えっと、正直、まだ飲み込めてないんだけど……」
でも、神の御業であれば、少女が突然現れたことも理解できる。
なぜにベッドの中だったのかという疑問は残るけれど、それはさておき、私は尋ねる。
「ちなみに司書って、
情報も少ないし、私たちが調べても判らなかったことが判るかと期待したのだけど……。
「しない。必要な情報は既に与えられた。神はそんなに甘くない――というか、呆れている」
少女の口調は無感情ながらも、その目にもやはり呆れが見える。
その理由はおそらく、過去に行われた人間同士の権力争い。
神様からすれば、魔物に対抗するために魔法を与えたにも拘わらず、その脅威が去る前に争いを始めた人間たち。しかもその過程では、ほぼ確実に魔法も使われたことだろう。
私たちからすれば大昔のことだけど、神様の尺度からすれば、おそらくは最近のこと。
「それじゃ、何も教えてもらうことはできない……?」
「そんなことはない。でも、努力しない者に祝福は与えられない。具体的には
「うぐっ!?」
やめて! その言葉は私に刺さる。
しかも、一ページしかない以上、それについては反論もできないし。
「な、なら、なんで私の所に? お姉様とか、もっと良い
「もっと良い
「うん。ほら、例えばアーシェだって」
小首を傾げる少女に隣を示すと、アーシェは小さく頷いて自身の
しかし、それを見た少女は「ふぅ」と息を吐いて、首を振る。
「そんなのは子供が使う擬い物。我らのような大人には相応しくない」
「へ、へぇ、そうなんだ……?」
大人とか、この子の外見で言われると違和感が凄い。『
だが、それはそれとして微妙にショックを受けているのが、擬い物と言われたアーシェである。
「え、私の
「本来、
「いや、諦めるつもりはまったくないけどね? えっと……」
なぜ私が選ばれたのか、司書という仕組みは何なのか、本来の
疑問点は多いけれど、今、最も気になるのは――
「あなたは何ができるの? 例えば
「できるわけない。常識的に考える」
うん、そうだね。普通はそうだよね。この子に言われると、釈然としないけどっ!
「それじゃ、いったいどんな役割と能力が……?」
「将来性に期待。我と
使えない
一気に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます