第14話 図書室の2人と1時間の推理

 時は過ぎ、新学期の始まる4月。


 俺は2年3組の理系クラス。前橋まえはし琴音ことねは2年6組の文系クラスと、完全に別々のクラスとなった。


 前橋と付き合いだしてから3ヶ月。様々な場所にデートに行ったり、一緒に食事をしたりと色々と楽しんだ。

 だからこそ、学校にいる間に会えない状態が続くのはどうしても嫌だ。


 ならば、会いに行けばいいと思うかもしれない。

 だがしかし、俺と前橋が付き合っていると知っているのは、俺と前橋の両親と、理央しかいない。付き合っていると他の男子たちに知られてしまえば、きっと大騒ぎになってしまう。その結果、余計会えなくなってしまうなんてことは全力で避けたい。


 何か良い手はないものか。

 そんなことを考えている時、前橋から1つのメッセージが届いた。


『学校で堂々と一緒にいられる方法を思いつきましたよ。伊崎くん。推理してみませんか?』


 俺は推理を始めた。一体、どうすれば、前橋と一緒の時間を過ごせるかと。


 放課後。俺は校舎内のとある場所へ向かって歩いていた。すると、1本の校内放送が流れる。


『本日は委員会集会があります。各自、自身の選んだ委員会の指定教室に移動してください』


 俺は図書室に来ていた。

 中には、1年生から3年生までの大勢の生徒がいた。そして、その中には当然、彼女の姿もあった。


「よっ。琴音」

「あっ、涼太くん!」


 2年生になった前橋だ。

 前橋の隣に座り、司書の先生の話を聞く。


「2年生の中にお昼休みの1時間、図書委員の仕事を立候補する方はいますか?」


 その場にいた2年生全員がザワつく。

 それもそのはずだ。週に1回、昼休みの1時間がまるまる仕事で潰れてしまうのだから。自分たちから積極的にやろうとする人はいるわけがない。


「「はい」」


 挙手した俺達2人を除いてだが。


「ありがとうございます。お2人はクラスが別々ですよね? それぞれ何曜日に仕事をやりたいですか?」

「いえ、先生。クラスは別々ですけど、私達2人でやりたいんです。その代わり、毎日仕事をしますから」


「「「「「「えぇっ!?」」」」」」


 周りの生徒全員が驚きの声を上げる。

 司書の先生も当然驚いていた。しかし、すぐに普段の落ち着きのある表情に戻った。


「私はそれでも構いません。しかし、毎日仕事をするというのは大変じゃありませんか?」


 疑問も当然だ。

 本が好きだとしても、毎日1時間そこに固定されしまうのは疲れるはずだ。まして、本だけでは飽きるに決まっている。


 でも、俺には本以外の楽しみがある。


「大丈夫です。その1時間、2人で推理をしてるので」

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