死んだ僕と幽霊が好きな彼女

ミツルギ

第1話 僕が死のうと思ったのは。

死んだ僕と幽霊好きの彼女


鳥本刀夢


自殺は駄目だって人は言うけど。

いったいなぜ駄目なのか僕にはわからなかった。


死んだ僕と幽霊好きの彼女。


僕が死のうと思ったのは、何処にも居場所がなかったからだ‥‥。


友達なんていない‥‥。

仲間なんていない‥‥。

味方なんていなかった‥‥。


僕が死のうと思ったのは、

「冷たい人」

「迷惑ばかりかけて一体なにを成し遂げたんだ」

「死にたい?死ねば!!」



だから死んでやった。

葬式では両親がぼやいていた。

「死んでまで迷惑をかけるなんてとんだ親不孝者だ」

その呟きが聞こえた。俺のために泣いてくれる人は誰もいなかった。


それを見て俺は何も感じなかった。

俺が歩いても誰も、振り返らなかった

当たり前だ死んでるんだし


すれ違いざまに知らない女子高校生。



俺は海の見える堤防で泣いていた。

怒り憎しみ悲しみ虚しさ全部の感情がごちゃまぜになって俺は泣いていた。



「みーつけた」

その声は恐ろしく無邪気だった。


誰にも見えないはずなのに。聞こえない筈なのに。


そいつだけは俺を見て俺の声を聞いていた。


「危ないよそこ」

え!?なにかに身体を海の方へ引っ張られた。




海に引きずり込もうとする亡者の集団がそこにはいた。


何だよコイツ等!!

「ドザエモンだよ海でなくなった人たち、君も連れてこうとしてる」


「ほら」彼女は俺にてを差し伸べてきた。


「大丈夫」まるで愛しいものを見るような目で俺を見ていた。


「君ってさ」

軽蔑される‥‥

「やっぱりイケメンだよね!!」

 「しかも死んでるし幽霊だし、超私のタイプ!!」

「やっぱり運命だよね」


「はぁ!?」

 コイツヤバい奴だ。


「ねぇ結婚しよ付き合おう!!!!」


「順番が逆だし、俺死んでるし」

「だからいいんだよ」



「生きてる人間なんか穢らわしいクズばっか。自分がただ生きてる事になんの感謝も示さない。みんな誰かに生かされているのにその事すら気が付かない。」


「その点貴方は違う、幽霊は違う。死んでしまったから命を失ったから、命の大切さが誰よりも分かる」


「だから私は幽霊が好き」

「貴方が好きなの」


まるですべてを見透かされてるみたいで、涙が溢れ出てきた。


「何でわかるんだよ」

泣かないの


「何で触れるんだよ」


「あぁ私、霊能者だから」

「君を私の婚約者兼、使い魔に任命する。」



「これから宜しくね。赤根 刃君」

どこにも居場所が無かった俺に、死んでから居場所が出来た。



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