祭の夜

@rona_615

プロローグ

 待ちに待った夏祭の夜。僕は親友のアキトと共に大人に内緒で家を出た。

 向かうは上野恩賜公園。

 おばあちゃんがくれたお小遣いで切符を買い、京浜東北線へ乗り込む。吊り革には手が届かないから、ドアの近くの棒にしがみつく。

 ガタン、ゴトンと列車は進む。

 浴衣姿の女の人。変な柄のシャツのおじさん。手をつないだ中学生。

 お守りを下げた人たちは皆、同じ駅で降りるのだろう。

 祭のルールは知っている。ちょっと危ないけど、その抜け道も。

 間延びしたアナウンスが、到着を告げた。乗降口から溢れた人で、車両がぐわんと膨らんだみたい。

 塊のまま改札へと向かう、その流れに負けないよう、僕はアキトのTシャツの裾をギュッと掴んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る