来る
不労つぴ
ナニカが来る
「おい、つぴ。今からお前の家に何か来るから気をつけろよ」
「はぁ?」
友人の
それを聞いてか、幼馴染の
傍から見れば笑い事かもしれないが、いきなりこんなよく分からないことを言われた側はたまったものではない。
「俺の直感が囁いているんだ……お前の家に何かよくないものが来るって」
――うっわ、また始まった。
僕は心のなかで悪態をつく。
隼樹は昔からこうなのだ。
本人曰く、そういう体質だそうだ。
しかし、僕を含めた友人たちは慣れたもので、彼が変なことを言い出しても日頃からスルーするように努めていた。
「お前の家の西側から来るぞ」
――西側。
確かに僕の住んでいる家の西側には集団墓地があった。
しかし、この土地に長年住んでいれば、そんなことは誰でも知っている。
隼樹は僕を怖がらせるために言ったのだろう――僕はそう判断した。
――いや、隼樹だと怪しいか。
隼樹は極度の方向音痴で、生まれて十数年住んでいるこの街のことですら把握しておらず、彼がどこかに出かけるときはいつも他の友人を呼び道案内をさせていた。
こんな理由の分からない事を言う隼樹だが、僕たち友人一同が隼樹の言葉を無下にできないことにも理由があった。
おそらく、本人の主張するように彼には世にいう霊感とやらがあるのではないかと推測できるからだ。
実際に、僕も彼といるときに、そういう現象に何度か巻き込まれたことがある。
なので、彼の言葉を100%否定することは出来ないのが、かなりもどかしかった。
「じゃあ、俺は寝る。せいぜい頑張りたまえよつぴクン」
最後の方に含みを持たせたように言い残すと、隼樹は通話から抜けた。
「なんなんだあいつ……」
困惑している僕を尻目に、橙花ちゃんは楽しそうに笑っていた。
ルームには僕と橙花ちゃん二人しかいなかった。
「ふわぁ……私も眠いからそろそろ寝るね」
橙花ちゃんは、可愛らしくあくびをしながらそう言った。
「うん。僕もそろそろ寝るよ」
「ちゃんと一人で寝れる?怖くない?」
橙花ちゃんは僕をからかうような感じで笑いながら聞いてくる。
「そんな、
と僕が返すと、橙花ちゃんはクスクスと笑っていた。
「じゃあ寝るね。おやすみ、つぴちゃん」
「うん、おやすみ」
橙花ちゃんがルームから落ちたのを確認して僕もルームから退室する。
最後の一人である僕が抜けたため、ルームは閉じてしまった。
さて、寝るか。
そう思っていた矢先――。
――コンコン。
カーテンがかかった窓の方からノックするような音が聞こえた。
きっと聞き間違いだろう。
既に夜中の十二時はまわっている。
こんな夜更けに来る人ような非常識な知り合いは僕の知っている限りいない。
――コンコン。
今度は確実に聞こえた。
どうやら僕の気のせいではないようだ。
僕はその場をそっと後にしようとリビングの方へ向かおうとした。
すると――。
――コンコンコンコンコンコン。
窓を叩く音はどんどん大きくなっているような気がする。
どうやら、カーテンの向こうには人でないナニカが大勢いるようだ。
――コンコンコンコン。
――コンコンコンコンコンコンコンコン。
――ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン。
どうやら、今日は一睡もできなさそうだ。
来る 不労つぴ @huroutsupi666
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