子どもが出来たと告げたら、旦那が逃げた。幼馴染が忘れないらしい
子どもが出来た。
そう告げると、旦那は急に私の前に現れなくなった。
子どもの性別すら聞くことはなかった。
政略結婚。親同士の約束で、私たちは結婚することになったのだけど、最初からこの人が私に興味がないことはすぐにわかった。
「アルダ~ン」
「ミシェル」
亜麻色の髪の乙女。
旦那、アルダンの2つ年下の幼馴染である少女に恋をしていることはすぐにわかった。
しかし、このミシェルという少女の家は、アルダンの家よりも家格が高く、釣り合わなかった。しかも、アルダンは気づいていなかったが、ミシェルには好きな男が別にいた。
幼馴染だからと、お小遣いや欲しいものを強請られ、デレデレとした顔で買うアルダンの姿に情けなさをいつも感じていた。
利用されているのだ。
そんなことにも気づかないなんて。
アルダンの恋心など、周りの人間には関係がないとでもいうように私たちの結婚はトントン拍子に進み、やがて私とアルダンは体をつなげることになった。
「うぅ…ミシェル…ミシェル…」
ぽろぽろと涙をこぼしながら、腰を振るアルダンの姿に、心がどんどんと冷めていくのを感じた。学生時代、夫婦になるのだからと、彼に話しかけたり、デートに誘ってみたりと色々してきたものの、彼は、結婚することは決まっているのに、どうしてそんな茶番をする必要があるのだと、叫ばれて終わった。
私の気持ちも必要ないようだった。
外面だけは良い男だったので、結婚式の時に「永遠を誓います」と言われ、どれほど笑いたくなったことか。
そして、子どもが出来たらこれだ。
私は本当にどうでもいい人間だと思われているようである。
「俺は、ミシェルのことが諦めきれない。俺のことは忘れて暮らすように」
という置手紙が、起きたらあった。
「ふぇええええん!!!」
「お~。よしよし…」
泣き喚く我が子。
まだこんなに手もかかる赤ん坊と出産したばかりで体がボロボロの女を捨てるなど、あの男は本当に鬼か。
「人でなしめ」
私は、旦那の両親に会い、置手紙を見せた。
そして、日々の様子を告げた。
旦那の両親は、実の息子だからと私のことを非難してくるかと思った。
しかし、違った。
申し訳ない。と一つ頭を下げられ、あとはこちらでやっておくから、あなたは子どもを育てることに集中してほしい。と使用人を雇ってくれた。
おかげで、家事はしなくてもいい。
それだけは感謝だった。
そして、数日後、旦那のサインの入った離婚届をもらい、私もそれにサインをして提出した。
これで、私と旦那は赤の他人となったわけだ。
政略結婚だというのに、あっさりとした最後だ。
互いの両親は何も言わなかった。
多分、わかっていたんだろう。私たちの関係はすぐに終わると。
それなら、最初から結婚の約束などしないでほしかった。
あの後、元旦那は幼馴染の子が忘れられずに、会いにいったらしい。
しかし、とっくに幼馴染の子も結婚し、子どもが生まれていた。
その子供は俺の子だと叫んだところを相手の旦那に殴られ、喧嘩になったらしい。
そうとう暴れたそうで、幼馴染夫婦は、あわや離婚の危機を迎えたそうだが、幼馴染は、元旦那を切った。
「そんな男知らない。ストーカーだわ」
といったらしい。
その言葉に元旦那はひどくショックを受けて、私のもとに来たが、私が冷たい目で「いまさら遅い」といった。
「娘を父なしにするつもりか!」
「先に捨てたのは、あなたのほうなのに、何をいまさら。あなたのような父などいないほうがましです」
そう言って、警察を呼んだ。
そのあとも元旦那は、私たちのそばを徘徊するようになり、娘を攫おうとしてきたので、正式に弁護士に禁止命令を出してもらい、私たちは国を出て、遠くの地で暮らしている。
娘には、好きなように生きろと言っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます