第二章 勇魔学院スカーナリア 入学テスト編

第46話 閑話休題(一章のまとめ?)

「成程……色々あったのだな……こちらの世界でも」


 そう言ってお茶を飲むのは『キエス=カルロン』。この作品の主人公にして『超越者』。

 見た目は銀色に近しい程の金髪で、碧眼には円環のような紋様が記されている。

 身長は実に172センチほどでやや痩せ型ではある。


 最も14歳にしてはかなり大きい方であり、事実カルロンもまた自分の身長の急激な変化に驚いていた。


「──前世の俺の身長を超えそうだなコレは」


 カルロンはそう言って溜息を吐き出す。前世ではあれだけ伸びて欲しいと思っていた身長がこうもあっさりと伸びられるのは少しだけ複雑ではあるが……まあそれもまた転生の醍醐味だと受け入れることにした。


 キエス=カルロンは『帰還』の魔法使いである。『火』『水』『風』『土』『光』『闇』『時』そして『空間』の八つの属性の中の『空間』に位置し、さらに始まりの魔法使いの血を引く正当なる魔法使い……つまりは『純粋なる魔法使い』……『純魔』の一人でもある。


 しかしカルロンは生まれて直ぐにハズレ、の烙印を押されることとなるのだが、その理由は『帰還』魔法が『転移』の下位互換だと思われていたからに他ならない。

 だがカルロンはその烙印を無視し、この『帰還』魔法を鍛え、そして本来の使い方を見つけたのだった。

 それこそが『無に帰すムニキス』と呼ばれる力。その魔法は文字通りいかなる物質だろうが魔物だろうが……ことごとくを『無』へと『帰還』させるというものだったのだ。


 さらに毎日ひたすら魔力のコントロールを特訓していた結果、カルロンは自身の肉体を魔力に再構築し直すという荒業を達成する。

 これによりカルロンはその存在が『人間』から『魔物』の方に傾いてしまったのだが、その時のカルロンは知りえなかった。


 こうして鍛錬を重ねた結果キエス=カルロンは化け物レベルの魔力量と出力、そしてコントロール技術を手に入れることとなった。


 しかしそんな時カルロンはついに家から追放されてしまう。しかしそれすらもカルロンの計画の一部であった。

 ──自分を使えないやつだと思っている魔法使いや貴族をボコボコにしたい(意訳)という事を冒険者たちに伝えてカルロンは彼らと手を結び様々なことの手伝いをする。


 そんなある日、魔物の中でもぶっ壊れの魔物が現れてそれにカルロンは一度自分の油断から負けてしまう。しかしカルロンの諦めない心に感化された女神の手により女神と契約して無事その魔物を討伐するのだった。


 その後壊れた冒険者協会を建て直している時にマジモンの化け物と出会い、そして因縁を付けられる。

 さらにあとを追うように舞踏会に参加しろと家から告げられ、めんどくさいながら参加するカルロン。


 そしてそこで伝説の暗殺者と戦いを繰り広げ、真の力に覚醒。


 ──した後すぐに謎の竜により『エルドラド』へと運ばれて行った。


「──で?エルドラドで何があったのかを知りたいんだな?シェファロ」


 シェファロと呼ばれたのは赤髪で、今はかなり長くなった髪をした優しいメイド(同い年)だ。

 彼女とは実に4歳からの長い付き合いだから、本当に仲のいい男友達くらいの感覚で接せれる唯一の相手だ。


「はい!……その、明らかに話してくれないじゃないですか!……せっかく試験会場までわざと馬車をとったのですから……この機会に教えてくださいよ!……それにこの知りたいですから!!」


「えー嫌なんだが?……いや別にシェファロを嫌っているわけじゃないぞ?──そのな、うん…………」


 そう、ここまで一切『エルドラド』での話をしていないのには訳があった。はっきり言うとひたすらボコボコにされただけなのだ。


 いやね?正直自分はかなり強いと思っていたんだよ、実際ここまで何度も死線をくぐり抜けたからさ?

 ───まさかあんなにボッコボコにされるとは思わなかったんだよね。


 それぐらい『エルドラド』の人々(竜)はやばかった訳だ。

 ちなみにそれは当然である。と言うのは『竜』は全ての魔物の頂点に位置する魔物であり、さらに言えば……『エルドラド』に辿り着けるのはその竜の中でも最も強いもの達のみ。


 叛逆律レベルは最低でも『ⅩCⅨ99』。ちなみに俺をさらったあの女性『スカサハ』に関しては『ⅨCMXCⅨ9999』……つまりカンスト。どうなってんだアイツらバケモンしか居ねえ。


 軽く指パッチンだけで山が消し飛び、足を地面に置いただけで俺の意識を刈り取って来る。

 そんな人外魔境、超越した奴らしかいないのが『エルドラド』だったわけだ。


 まあそこで鍛え上げられたのでね、当然だが俺は化け物に食らいつくことで何とか奴らと戦えるまでに成長したわけだよ。──勝てるとは言っていない。

 だから話すも何も、ほぼ全て俺がボコボコにされた話しかないのでマジで話すことがないのだ。


 ◇◇


「──カルロン様ですら相手にならない化け物しかいない国……恐ろしいですね……心底彼らが異世界人で滅多にこちらの世界に干渉してこないのが救いですね……」


 まあ俺がボコボコにされた話はまた今度。とりあえず隣にいる白銀のやつについて話す必要があるな。


「起きろ、クゥ……!朝だぞ!」


「ミュ?……朝、朝……朝かぁ……カルロン様……まだ眠いし夜って事で手を打ちませんか?……じゃあおやすみなさい〜〜zzz」


「───寝るなぁ!もーあの人らマジで面倒なものを押し付けてくれやがって!!」


「か、カルロン様この人は……?」


「コイツは竜の子供、まだ強さもそこまでじゃないからせっかくだし鍛える名目でくれてやるよ!だとさ」


「クゥ……クゥ……」


 彼女は『魔銀竜・クゥ=ベルノート』……そのからだはミスリルで出来ているという伝説の魔竜。……の子供。

 ちなみにまだ5歳。


「後、5歳?!……このサイズでこの魔力で?!」


 シェファロの驚きも当然だ。少なくともほとんどの人間がコイツを見て5歳とは思わないだろう。実際見た目は18そこらであるし、知能ももちろん人間を軽く超越しているのだが……まあコスパの悪い肉体だからかよく眠っている。


 ちなみにキレると普通に国一つ位は消し飛ばせるらしい。……ちなみに俺と契約しているので普段は俺の影の中に寝ている。──おや?


「はあ全く、コイツにスペース取られるの勘弁して欲しいわ!……お久〜シェファロちゃん!〜」


 この軽いヤツは女神ヘカテー。俺と契約した女神。ちなみに割と駄女神……。


「誰が駄女神じゃボケが!……私はね!崇高で最高なる神聖で淑女的な女神様なのよ!……ね!シェファロ〜ちゃーん!」


 こいつの力は確かなのだが、まあいかんせん女神らしく少しだけ価値観が違うので割と揉める。


 そんな俺たちを載せた馬車は試験会場である王都に向かう為にゆっくりと進んで行った。


 ◇◇◇


 ──ここより始まるは青春。甘く酸っぱく、多分爽快なる無双劇。

 化け物が人間らしさを取り戻しつつ、様々な経験を受けてさらに化け物の度合いを上げる物語。


 ──即ち『第二章、学院編』……開幕。

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