第12話 求めるもの
「ん? ミラ嬢ちゃんじゃないか。どうしたんだ、今日は。訓練はもう終わったろ」
自警団の詰め所に辿たどり着つ くと、そこに持ち回りで常駐している自警団員の一人がミラの顔を見てそう尋ねる。
ミラは、
「今日は人を紹介したくて来たの。この人、バーグさん」
そう言って後ろに立っている人物を前に押し出す。
「バーグさん? 行商人のか? あんたが……いや、こりゃどうも」
流石に自警団員も名前はすでに知っているらしく、すぐに挨拶をする。
「いえ、こちらこそ……。あの、この子が自警団員というのは本当でしょうか?」
バーグが自警団員に質問すると、答える。
「あぁ、ミラの嬢ちゃんはうちの中でも腕利きの一人だからな。この年齢にして
「え……そ、そんなに強いのですか?」
驚くバーグに自警団員は言う。
「まぁな。つっても、こんな辺境の村の自警団員の中ではってだけだから、王都から来た人からすりゃ物足りねぇかもしれないが……それで、あんたどうしたんだ? うちに何か用事があるからミラ嬢ちゃんに紹介なんて頼んだんだろ?」
「え、ええ、まぁそうなんですが……その、ラムド大森林に入りたくてですね……」
そこから、バーグは自分の事情を説明した。
全て聞き終わった自警団員はなるほど、と
「そういうことなら、それこそミラ嬢ちゃん達が適任じゃないか?」
「え?」
「だって、ミラ嬢ちゃんの他に、アルカとジュードの奴はラムド大森林が遊び場だからな。ま、奥地には流石に行けないだろうが、浅いところならその辺の森と大して変わらねぇし。なぁ?」
話を振られたミラは頷くも、
「私達よりも、もっと頼りがいがありそうなおじさん達の方がいいんじゃないかと思って来たんだけど……」
と言う。
しかし自警団員は首を横に振って言う。
「馬鹿言うなよ。ラムド大森林には多少は入りこそすれ、お前らほどの頻度じゃねぇからな、俺達は。誰よりもあそこに詳しいのはお前らだよ……で、どうしますかい? バーグさん。やっぱり俺達の方がいいですかね?」
話を振られたバーグは困惑したように
「本当に……ミラ、君が……君達が? だが……危なくないのか?」
「危ないか危なくないかで言ったら危ないよ」
「じゃあ……」
「でも、バーグさんはその危ないところにどうしても入りたいんでしょ?」
「え?」
「なんとなく、焦っているような感じがするから……間違ってる?」
ミラがそう言うと同時に、バーグは息を止めた。
それから苦笑し、言う。
「まさか、君のような年齢の子に見抜かれるとは……これは商人失格かな?」
「ううん。しっかり隠せてたと思うよ。でも私、人の表情を見るのが凄く得意なんだ」
これに自警団の男が、
「あぁ、確かにミラの嬢ちゃんはその辺気が利くな。自警団の訓練でも調子悪そうな奴のことはすぐに気づくし……」
そう言う。
「訓練で打ち所が悪くて死んじゃったら元も子もないからね。その辺はいつも気をつけてるの」
「いや、いつも本当に助かってるぜ……ってわけで、あんた商人失格でもないんだろうよ」
「それなら良かったですが……ううむ」
ここで悩むバーグに、ミラは畳みかけるように言う。
「
「素材なんかも詳しいのかな?」
「結構ね。私もだけど、村の
これもまた事実で、三人でラムド大森林に入り浸っていることがバレたときから、そうなっている。
しっかりと素材の見分けがつかないと意味ないだろうと、定期的に学ばせられた。
と言っても、ミラは元々職業柄、そういった素材には極めて詳しく、ほとんどが知っているものばかりだったので大して大変でもなかった。
ジュードとアルカは頭を抱えていたけど、要領のいい勉強法をミラが教えたのでなんとかなった。
今では三人揃って、村の薬師にいつでも跡を継がせられると言われるくらいには身についている。
「そんなことまで……では、恥を忍んでお願いしてもいいかな」
「分かった。必要な素材は?」
「《
「……ふーん。分かったよ。じゃあ、そうだな……今日は流石に難しいだろうから、明日の朝出発でいい?」
「ああ、構わないけど、ミラはそれでいいのかい?」
「私はいつも暇だから。他の二人もね。じゃあ……」
それから、バーグに待ち合わせ場所と時間を告げ、別れた。
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