それいる?

鷹橋

本編

 タクシードライバーの彼女をしている。

 オフィス帰りの足にもなるいい彼氏。賃金もそれなりにもらってはいる、と思う。羽振りいいし。

 あたしのことを気遣ってくれて毎日送迎してくれるお抱え運転手。結構、あたし自身も惚れてはいる。

 ただ最近忙しいみたい。今朝も、

「俺には超能力がある」

 だなんて、よくわかんないことを抜かしてた。大変な仕事なんだから、しょうがない。

 そんな人を待っている。もう定時から一時間は待ちぼうけ。待つのは嫌いじゃないけれど心配でもある。

 彼が来た。

 タクシーは見当たらない。ここらは駐禁エリアだし、コインパーキングもそれなりに高いはず。

「タクシーどうしたの?」

 彼は鼻の下を指先で軽く拭く。

「いいや、もう必要ない!」

  ……意味わかんない。

「どうして」と、言葉が口からこぼれ出る。

「朝送ったよね。超能力に目覚めたんだ!」

 ああ、会社クビにでもなったのかな。あたしが支えるか。余裕はある。

「夜寝てたら夢に神様が出てきてね」

 重症だ。早くなんとかしないとなあ。

「俺、遠くに住んでるじゃん? どうやってここまで来たと思う?」

「え、電車でしょ?」彼ははにかむ。なんだ元気じゃん。

「神から与えられた脚で走ってきた!」

 あたしはあほらしくなる。

「それいる?」

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それいる? 鷹橋 @whiterlycoris

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