第22話
「あんなこと言って本当に良かったの?」
水浴びから帰って部屋に戻ると、今日は流石にロバートは来なかった。さっきあれだけ啖呵切ったんだ、遊びには来にくいよね。
「さっきも言っただろ。俺が言い始めたんだ、二言はねえよ」
「でも僕まだロバートに勝てないよ?」
惜しい惜しいと言われながらも未だにロバートから一本取れたことはないし、勝率0%じゃあ最初からロバートの言うことを聞くと言ってるのと変わらない。
「悠長にしている暇は無いとはいえ、別に今すぐ決断しなくてもいいだろ?納得するまで考えてから結論を出せばいいんだよ。決断したからってすぐ決闘する必要もねえし」
もし仮に負けて騎士になることになったとしても、戻れる確率が0って訳でも無いだろうしなと仁は言う。
確かにそれはその通りだし、なんなら冒険者になったからと言って必ず元に戻れる保証がある訳でもない。ただ、確率と自由度の問題だ。
「それにお前だって、議論の余地も無しに断ってしまうのは流石に不義理だと思ってるんだろ?」
「それはまぁそうだけど…」
ジョン達が学校について知れたのも、勉強を付けてくれたのも、多分僕達を居候させてくれてるのも、僕達が騎士になってロバートを支えて欲しいと願ってのことだと思う。僕のわがままだけでそれを覆してしまうのは申し訳ない。
「でもわざわざ決闘で決めなくても良かったんじゃない?」
「一番それっぽいから決闘って言っただけだ、別に二人が納得するなら決闘でもジャンケンでも構わねえよ」
この世界にもジャンケンがあるのかは知らねえけどなと仁。僕のことを思ってのことだろうけどなんとも適当なやつだ。
「ま、俺もお前もガキじゃねえんだ。負けて喚くとは無いだろ」
「竜にはしゃぐ事はあったみたいだけど?」
バッカお前、竜は男のロマンだろとまた訳の分からない感性で胸を張っている。
「でも僕達の今後か、しっかり考えないといけないよね」
今まで周りに流されてきたけど今後はそう言う訳にもいかない、そろそろ自分たちの道を示さないと。
「実際のところ仁はどう思う?騎士か冒険者、もしくはそれ以外か」
「どうもこうも俺は魔法の勉強ができて、その上で元に戻れればそれでいいんだよ。大体、人生の選択なんて子供だけの権利でもなんでも無いだろ。ミスったと思ったらその時変えればいいんだよ」
「流石、仁らしいワガママな意見だね」
何とも無責任な元ニートの迷言だ。と言っても言ってる事自体は間違いではないか、選択なんて何度もするんだ、今回もその中の一つ。
「ただ、どの選択をするにしても早く決断してやったがいいだろうな。俺たちとギクシャクしたままはロバートにとっては辛いだろ」
「そんなことは分かってるよ、だからこそ仁の意見も聞いたんじゃないか」
初めての友達と喧嘩して、今のロバートには相談相手もいない。きっと心細いだろう。
「ま、俺の意見はさっき言った条件さえ満たせば騎士だろうが冒険者だろうがそれ以外だろうが何でも構わねえよ」
後のことはお前に任せると無責任な事を言って仁はベッドに入る。こいつ、考えるのが面倒になりやがったな。
「それでも、やっぱり僕達が今取れる最善手は一つしかないよね」
こうなったら僕も男らしく腹を括ろう、僕にできるのは腕を磨くことと覚悟を決めること。ただそれだけだ。
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