第7話 動転 3

イザベラさんの目の前は何も残っていなく、ただ焼け焦げた景色のみだった。


「やったんですか?」


「馬鹿言わないでくれよ。こんな程度の魔法でやつを殺せるわけないだろう。それどころか当たってすらいないよ。」


「正解」


その声が聞こえると同時に、イザベラさんはあらかじめ練っておいた魔力を用いてすぐさまを使う。


「<怒りの日ディエス・イレ>!」


その瞬間俺たちの周りを黒煙を覆い、まるで帯電しているかのように紫電が迸っている。


「なるほど。てめぇやっぱり強ぇな。俺様への対抗策をもう考え付いているとはな」


「別に?君が近隣諸国で暴れまわっているのは耳にしていてね。近いうちに戦いになることを予想していたまでさ。」


「なるほど。しかしそれだけじゃ俺様は止められない」


「そんなこと言われるまでもないよ。<鎮魂歌レクイエム>!」


その瞬間紫電の勢いがさらに増し、まるで雷の檻のようになる。それと同時に勢いが増してあふれ出した紫電がフェンリルに向かって放たれる。


しかしフェンリルはやすやすとそれを回避し、しゃべり続ける。


「違うなぁ。まだまだ甘いんだよ。俺様が言ってるのはなぁ」


その瞬間フェンリルの姿が消え、それと同時にとてつもない轟音が鳴り響く。

俺は音の先へと目を向ける。


「この程度じゃあたっても意味がないってことなんだよ」


そこには煙を上げながらもほとんど無傷に等しい様子でいるフェンリルが立っていた。


「アキラ!!」


イザベラさんは俺を守ろうとしようと、魔法を行使しようとする。だが―――


「おせぇな」


俺が瞬きをした瞬間、もうすでにフェンリルはおらず、振り向くとそこには―――


「ぐぁぁ!!!!」


左腕を失いもだえるイザベラさんと―――――――――――――――


「やっぱり、魔力がしっかりみなぎっている肉はいいな。深みが出て美味い」


イザベラさんの左腕を咥えながら、すでに檻の外にいるフェンリルがいた。


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