第75話 相性
「じゃあまずはゾンとルアで魔力を混ぜ合わせてもらえるかい?」
「「分かった!」」
2人の話を聞く限り魔法2つを合体させるのには魔力の融合が肝になると思っている。ゾンとルアはこの行程が上手くいったからこそ何も躓かずに出来たのだろう。ただ、僕にはどうも魔力を混ぜ合わせるということが簡単だとは思えない。
強力な魔法は力に直結する。それは貴族社会でも同じだ。未知の森に隣接するという土地柄、強力な魔法を開発するために様々な貴族が魔法を研究してきた。
それは過去の書物から紐解いたり、または新たなやり方で全く新しい魔法を開発しようとしたり。僕は具体的にどんな事が行われていたかは分からない。それでも魔力を混ぜ合わせるという行程が無かったとは考えられない。
もしこんなにシンプルな方法で強力な魔法が発動出来たのなら、それを見つけた家は途端に権力を持っただろうから。
「「出来たよ!」」
「うーん…」
なんとも奇妙な感覚だ。魔力が見えるわけではないが感じる事はできる。ゾンとルアの魔力が近づき、反発する事なく混ぜ合わさった。そして混ぜ合わさったものは2人のというより全く別の魔力になったと感じた。
「どおー?」
「何かわかった?」
「2人の魔力が反発しあう事なく混ざった事に驚いたな。2人の中でも反発するような感覚とかはなかったか?」
「「ない!」」
「そうか、まあとりあえずやってみるか。じゃあ…」
「キュ」「私が!」
「キュウ…」
なんだかルアはいつにも増してやる気がある。こんなに積極的なルアは珍しいな。テンもルアのやる気に気圧されてしまっている。
「テンにも後でやってもらうからね。」
「キュイ!」
「じゃあいくよ。」
「うん。」
魔力を空中に放出していきルアの魔力へと近づいていく。そしてルアの魔力と触れ合って…
「ん…」
「あれ?」
2人がやってたようにすんなりと混ぜ合わせる事が出来ないな。
「ルアはそのままでお願い。」
「うん。」
まあ簡単に出来るとは思っていなかった。今度はルアの魔力量と出来るだけ同じになるように調節する…
「出来ないね。」
色々と試しているが一向に混ぜ合わさる気がしない。試しにゾンともやってみるがやはりダメだ。他に考えられるとしたらゾンとルアが無意識に何かをやっているとかか?
「キュイキュイ!」
「ああごめんごめん。テンとも試してみないとね。」
結局何がダメなのか分からず今までと変わらないように魔力を近づけていくが…
「キュキュイ!」
「出来た…?」
「「出来た!」」
「なんでなんでー?」
「何かかえた?」
「いや、僕は何も変えていないんだが。もしかしてテンが何か工夫してくれたか?」
「キュー?」
どうやらそういうわけではないようだ。となるとますます何が理由か分からなくなってきたな。
「僕がテンとやってみるー!」
「確かにその手があるか。試しにやってみてもらえるかい?」
これでテンとゾンが出来れば僕が原因ということになる。そう思ってテンとゾンにやってもらうが魔力が合わさる事はない。ルアともやってもらうがやはりダメだ。
「なんでだろうね?」
「僕にもサッパリだ。ゾンとルアだけなら双子で魔力の質も近いために合わさりやすいのかもしれないが、それだと僕とテンが出来る理由が分からない。いや、テンは僕の魔法で生み出した存在だから魔力の質も近いのか?」
「キュ!」
「だとしたら魔力の質が近い人間としか出来ないのかもしれないな。今の所サンプルが少ないからなんとも言えないが、魔力が混ぜ合わさるにはその者たちの相性があるのかもしれない。」
「キュイキュイ!」
「私もウカノと魔法を発動してみたかった…」
「そう落ち込まないでくれルア。あくまで現状の考察でしかないし、もしかしたら今後調べていく上で僕とルアで一緒に魔法を発動できるようになるかもしれないよ。」
「ほんと?じゃあ私その方法を頑張って調べる!」
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