第15話 狩るモノと狩られるモノ
相手が狼の魔物とはいえ戦い方は今までと変わらない。テンが相手の注意をひき、僕が魔法で攻撃する。今までの相手より機動力があり、身体強化が使えるだけの相手だ。
「テン、無理はしないでね。」
「キュ!」
テンが駆け出し、狼の注意をひく。機動力の高い相手には、見えづらく、速度の速い風魔法で攻撃する。
「ガウウウ!」
最初は気にした様子もなかったのに、徐々に苛立ってこちらにも攻撃を仕掛けてくるようになった。
馬鹿め。苛立ってより攻撃が単調になってるぞ。そんな攻撃僕でも余裕を持って躱せる。
相手がこちらに攻撃を仕掛け始めてからは躱すことに注視する。同時に手のひらに魔力を纏い相手の体に触れる。
「ガッ?」
何度かやって効いたみたいだな。僕の魔力で相手の魔力を乱してやった。家に居た時は、訓練相手は僕よりもガタイが良く、魔法の攻撃力も僕より強い者ばっかりが相手だった。純粋にやって勝てる相手でないからこういった小細工を編み出した。
あまりいい顔はされなかったが、母様だけは
「勝つ為に体を鍛える事は勿論大事ですが、頭を使って勝ち方を探すのも大切な事です。ウカノなりに考えた戦い方は素晴らしいものですよ。今後もウカノなりの戦い方を鍛えていきなさい。」
と褒めてくださった。それ以降かの戦い方が自分の戦い方なんだと指標を得る事が出来た。
今までお前はその身体強化を強みに獲物を狩っていたんだろうが、その身体強化がないお前は、自身が獲物へとなったんだ。
ありったけの攻撃力をもった風の刃を生成し、狼の眉間目掛けて放つ。
「ガアアアアアア!!」
なんとか終わったか。初めての魔物との戦闘だったが無傷で終えれたのなら大勝利だろう。
「キュウーン…」
「落ち込んでいるのかい?テンはいつも通り頑張ってくれたじゃないか」
「キュイー…」
普段の狩りはテンがずっと注意をひいてその間に倒していた。今回は途中に僕だけを狙っていたからそれで落ち込んでいるのかな?テンは自分が出来ることを全力でやったのだから落ち込む必要なんてないのに。
おっ、これが魔核ってやつか?
落ち込んでいるテンを慰めつつもいつも通りテンに命の結合を行い解体していると拳大の大きさのゴツゴツとした物が出てきた。中には魔力が凝縮されているので間違いないだろう。それにしても不思議だな。全ての器官に柔らかさがあるのに魔核だけ硬いのだから。
いつも通り何往復かして、解体した肉を拠点へと持って帰るがやはり大変だな。重さを軽くするような魔法や、風魔法で浮かして持って帰ろうと試行錯誤しているがなかなか上手くいかない。まあすぐに出来ると思うほど驕っていない。何度も試行錯誤していつかできるようになればそれでいい。
「キュキュキュ!」
「シャ?」
「キューキュキュイ!」
「シャーシャシャ」
「キュ!」
いつも通り狩った獲物を大蜘蛛へとお裾分けしに行った時、テンが大蜘蛛へと話しかけている。お互い会話が出来ているのか分からないがテンは満足げだ。ま、まあテンが満足ならそれでいいか、、、
「キュー! キュキュー!!」
美味しい!魔物だからかなのか普段の動物の肉よりも肉が引き締まっていて美味しく感じる。
「やっぱりテンは食いしん坊だな。さっきまで落ち込んでいたのが嘘みたいだ。あんまり食べすぎると太るからね?」
「キュ!?」
いつも通り余った肉は、大きな葉っぱに包んで氷魔法をかけ洞窟の奥に保管する。魔核は…どうしようか。もの珍しさに持って来てしまったが、人間社会にいた時ならいいお金になったんだが今や使い道がないからな。まあスペースには困っていないから肉と一緒に洞窟の奥に置いておこう。
「キュピー…キュピー…」
僕の足の上に登って来たテンを撫でていたら寝てしまったようだ。あんなに食べたんだから眠くもなるか。
テンのお腹をプニプニしてみる。柔らかくて気持ちいい…将来デブにならないよな?
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