危険な挑戦

マスカレード

第1話

 私のペンネームは、マスカレード。

 エディター仲間からは、レドって呼ばれています。

 ねぇ、みなさんは小説書くときに、取材とまではいかなくても、下調べはしますよね?

 レドはそれで大失敗をしてしまったんです。

 もう、思い出すだけで顔から火を噴きそうなほど恥ずかしい。

 でも、今回は特別に、こそっと打ち明けますね。


 ある日のこと、レドは自分にとっては新分野のBLに挑戦してみようと思い立った。

 公募なんてハードルが高すぎると思い、いつでも受け付けますと謳ってある出版社に原稿を送ることに決めて、募集要項をチェックすると……

 な、な、な~んと! ラブシーンを一か所必ず入れることと書いてある。

 男と男のラブシーンをどうやって書けばいいんだと頭を抱えてしまった。

 ラブシーンだけでも難しいのに、主人公同士がゲイじゃないかぎり、性的に絶対に結ばれるはずのない二人を両想いにさせた上で、ことに及ばせるという超高級テクニックがいる。

 マジか~。男と女なら例え身分差があろうが、気に食わない相手だろうが、ほんの少しシチュエーションを変えて相手の意外性を見せれば、恋に繋がる可能性があるのに、男と男でそれが通用するのか?

 とりあえず、自分なりに一生懸命考えて、その上恥ずかしさに身悶えしながら書いたものを、ある出版社に送った。

 投函した後に、同じところに投稿した人はいないかと検索したら、結構厳しい評価が返ってくるとのこと(;゚Д゚)

 これは、撃沈したなと思っていたら、思いがけず良い評価が戻ってきて、レドは狂喜乱舞した。

 単純なレドは、「よし今度もBL書いて、公募に挑戦だ!」と息巻いてパソコンに向かっけれど、ハタと気が付いたことがある。

「ラブシーンどうしよう」

 あれやこれやと思い起こそうとするが、レドは男ではないから想像するにも限界がある。追い詰められると、レドはいつも変なスイッチが入り、怪しい関西弁をしゃべり出すのだが、そのときも弾けるように人格が変わった。

「どないするんや! ラブシーン必須ってことは、みんなそこを楽しみに読むんやないか。ワンパターンじゃあかんやろ。う~~~っ。どうすればええんや」


 既成の小説や漫画を読んで勉強するのはいいけれど、そのまま真似をしたら著作権に引っかかるし、経験を積むと言ったって、男でないレドには最初から無理な話。残る手は、三次元映像を見て経験を積んだつもりで創作するしかない。

 で、で、で、でも~、でもでも~~~~~~、二次元ならまだファンタジーで済むけれど、さすがに三次元はきつい。別に差別意識は持っていないけれど、男女のAVも見ないレドが(ほんとか?)、いきなりman×manは厳しい! 

 ストーリー性の無いラブシーンに特化した小説や漫画を読んだ時なんかは、男女ものやBLに限らず途中で満腹になり、「すごいね~。もはや人間の域を超えていないかい?」と虚ろな目をしながら本を閉じるのに、本当に三次元にいけるのか?

 いやや~! もし、髭ずらの男二人がどど~んと出てきたら、それだけでBLを書こうという意志が成仏しそう。

 とりあえず、ソフトなものがあるかどうか検索してみると、初心者向けBL映像と書いてあるバーナーがあったので、「良かった。これだわ」とクリック。


 ドッカ~ン(/・ω・)/

 「あなたが契約したチャンネルに対して、38万円の契約料が発生しました。つきましては云々かんぬん。支払わない場合は、法的な処置が取られ……」

 レ、レド まだ何も見てないし……

 どどどどどどどないしよう~~~~~~~💦

 頭の中に払わなかった場合の呼び出し状がチカチカと浮かんだ。

 「被告人レド

  man同士のAVをただ見して、契約料を払わなかったので、

 そちを訴えることにする」


 で、でもレドまだ何にも見てないし……

 恐ろしい事態だけど、なんで三十八万なんて中途半端な金額なん? と疑問がちらほら浮かび、相談できる相手を思い浮かべてみる。

 両親の声「ダンナが出張中に一体何を見ているの!?」

 だ、だめだ。恥ずかしすぎる!

 じゃあ、ダンナに相談する? 何て言うの?

「あの、あの、あの、え~とA~……」

 Vまで言えそうもない。ああああああ~~~~っ、身の破滅じゃ~~~~っ!!!!!

 頭の中をぐるぐる回るどうしよう。実際は動いていないのにちょっとお疲れモードに。ぐったりしながら同じ体験をした人がいないか検索してみた。

 

 👀じ~~~~~っ (∩´∀`)∩ おるやん! 

 何やの。お父さんや兄やんが引っかかって、慌てて振り込んでしまった話がザックザック出とるやん!

 良かった! 何が良かったか分からへんけれど、とりあえずお仲間がおるみたいや。どうすればいいのかというと結果は


「 ( `ー´)ノほっとけ! 二度とそういうの見るな!」

 はは~~~~~~っ(*- -)(*_ _)ペコリ 承りました_(._.)_

 

 というわけで、レドは未だに綿密なBL作品を書けずにいる。多分ずっと読み専門のままなのかもしれない。

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