一つめの不思議、一年二組の教室

 扉を開けて教室の中へ入ると、スピーカーが壊れているかの様な不気味なチャイムが鳴り響く。

 それはまるで、学校七不思議の幕が上がる合図みたいに感じられた。

 教卓の上に教科書が乱雑に投げ出される音が聞こえた。


「起立……礼……着席……」


 どこにも姿が見当たらないのに、教室のどこからか子供の声が聞こえた。

 周囲からは椅子を引いた時の音がガタガタと一斉に鳴りだす。


「早く教室から出て!」


 砂月先生の大きな声で我に返り、一年二組の教室から慌てて飛び出すと、先程まで騒々しかった音がまるで嘘かの様に一切聞こえなくなっていた。


「何なの、誰もいないのに音が聞こえ出すとか怖すぎじゃない!? もう学校から出た方が良くない? これで満足したでしょ? えぇ、楽しかったって本当!? 二つめの不思議を確認したいって? もぅ先生帰りたいよぉ……。ちょ、ちょっと! 置いて行かないでよー!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る