ジンベー様の挑戦

習合異式

プロローグ

プロローグ


 夏の日の昼。私は部屋でホラーゲームの実況動画をスマホで見ていた。好きな配信者の動画で楽しく見ていたのだが、ふとコメント欄の


『こいつ声キモすぎ』


 というコメントが目につく。最初は気にしないようにしていたのだが、なんだか暗い気持ちになってしまい私は動画を見るのを止めた。


 不快な世界の繋がりに疲れてしまった私は、逃げるようにスマホを投げ出し目を閉じる。


 けれど少しもしないうちに、スマホの通知音が私を世界に引き戻した。


 画面には『SARF ジンベー様の挑戦』という表示。興味がなかったので通知を消そうとしたその時。勝手にアプリが開き、スピーカーから男子にも、女子にも聞こえる高い声が聞こえてきた。


「よう。ボクはジンベー様。今日はボクちゃん主催の……えっと、なんだっけ……そう! デスゲームに参加してくれてありがとう!」


 物騒なことをいう声を無視して、アプリを閉じようとする。が、閉じられない。再起動すらできなくなっている。そんな私を嘲笑うように、ジンベー様と名乗る声は楽しそうに続けた。


「せっかくのお楽しみをシカトしないでよ」


 スマホがウイルスにでも感染してしまったのか。私は固定電話からサポートセンターに電話をしようとしたが、ジンベー様はおっと、と言って私を止めて……


「誰かに言ったりするなよ。もし言ったら……」


 次の瞬間、悲痛な少女の叫び声が聞こえてきた。


「お願い! この妖怪から私を助けて!」


 助けを求める声と、内容の突飛さに私の思考は止まる。ジンベー様はくひひと笑った。


「ボクはウイルスじゃない。正真正銘の妖怪さ。そして今、きみに呪いをかけた」


 ジンベー様がそう言うと、部屋のドアと窓が大きな音を立ててひとりでに開いた。


「ボクとのゲームに勝てば、きみとこの哀れな女性にかけた呪いを解いてやる。もし、きみが負ければ……あとのお楽しみにしておこうか」


 常軌を逸した状況だが、私の頭はやけに冷静でジンベー様に私は何をすればいいとたずねた。


「そうだね。まずはゲームの開始地点に来てもらう。でも、ただ来てもらうのじゃつまらない。今から言うヒントをよく聞いて、街の中から当てはまる場所を探すんだ」


 私に異論を挟む隙与えず、ジンベー様はヒントを歌うように告げた。


「私は平和を祈る者。音楽と水の近くで足元の我が子をの未来を願う……急いで来たほうがいいよ」


 私はヒントを聞くやいなや、部屋を飛び出し、仙台の街に駆け出していた。

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