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@saisai-hi

第1話

「だいさんってなんでそんなに優しいの?」

ああ、愛しい人の声が聞こえた。

「え?わかんない。とりま、大好きだよ。」

俺は、いつもみたいにあきにそう言って後ろから抱きしめた。

あきは、料理が好きだ。

特にスイーツ作りが好きで、俺の大好物のカヌレをよく作ってくれた。

今日もいつも通りにカヌレを作ってくれたけど、どうやら失敗したみたいだった。

正直、俺には失敗したように思えなかった。

だから俺は作ってくれたカヌレを食べながらこう言った。

「え、全然美味いやん。」

そう言って、あきがびっくりしながら、

「優しすぎる。」

そんなこと言いながらも、愛おしそうに見てくる。

その顔はずるい、ああ、かわいい。

いつもそう思いながら抱きしめてた。

俺が大学3年のときに、入学してきたあきと出会い、俺の猛アタックもありながらあきは付き合ってくれた。

もう付き合ってから1年経っていた。

お互い一人暮らしだったから、付き合ってすぐからほぼ同棲状態だった。今日までずっと。

些細なことで喧嘩もした。

喧嘩なんてどうでもいいぐらい、お互い惹かれ合い、このまま結婚するんだろうなって思ってた。

だけど、大学生活最後の1ヶ月となった日、2月25日に別れた。

原因は、俺の浮気だった。

俺は流行りのマッチングアプリをやって浮気をしたんだ。

正直、本当に好きだった。

けど、他の人との快感や背徳感、就活や卒論からくるストレスに負けた。

それでも別れた今は、思ったよりもスッキリしてる。

せいせいしてるとも言えるのか。

そんな考え方しかできない俺は、自分に苛立ちも覚えながらも見て見ぬふりをした。

なんと言っても来月には東京に引越し、大手IT企業でエンジニアになる。

気持ちは新しいことに向いていた。

「よし、俺は自分のやりたいことを極める。」

俺はよくそう呟き、前を向いていた。




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