第39話 領民思いの領主様
領主様からの手紙が届いて二日がたった。
わたしは迎えの馬車に乗せられて領主様の住む屋敷に向かった。
あたりまえだけどアジェガさんの馬車と比べてゆっくりだった。
それに馬車そのものがすごく豪華!
椅子がふかふかで乗り心地もすごくいい。
まさに快適そのものだった。
そんな馬車を持っている領主様の屋敷ってどんなものだろうって思ったけど、思ったとおりの大きさだった。
ベリル村くらいの敷地に白い大きなお屋敷がたっている。
ただ、意外だったのは敷地内にいろいろな野菜が育てられている畑がある。
「あの畑って」
気になって案内してくれている使用人さんに聞いてみた。
「あれは旦那様の意向で広い敷地内で農作物を育てているのですよ。あそこで育てられた農作物は屋敷での食事で使われたり近くの村や町で配られたりしております」
へー。
「それってほかの領地の領主の方々もやっていることなんですか?」
「いえ。私が存じ上げている限りでは旦那様だけですね」
なるほど。
「領民思いだという噂を聞いたことはあったんですが本当にそうなんですね」
わたしの言葉に使用人さんは微笑む。
「ええ。旦那様は私が領主として生きているのは領民のおかげだ。彼らのことを大事にしてこそ真の領主であるとよくおっしゃっています。執務がひと段落つくと旦那様自ら街に降りてその土地の人と交流し領地の運営に役立てておられます。カルミア様のベリル村にもなんどか行かれたことがありますよ」
え⁉全然知らなかった⁉
「領主がやってきたと知られたら領民が委縮し対等な交流が行えなくなりますからな。行くときは変装をしておられるのですよ」
もしかしたらどこかで会ったことがあるのかもしれないな。
そんなことをやっているルドベキア様ってどんな人なんだろう?
そう思いながらわたしは屋敷の中に入る。
「こちらです。すでにルドベキア様は中でお待ちです」
あ、領主様が自ら先に待ってくれているんだ。
てっきりなかで待つのかと思った。
使用人の人はドアをノックする。
「旦那様。カルミア様をお連れしました」
「通してくれ」
中から男の人の声がする。
「失礼します」
使用人さんがドアを開ける。
そこには机をはさむようにしてソファが置かれていてその一つに金髪の男性が座っている。
思ったより若いな。ぱっと見は20代くらいに見える結構美形の人。でも目の下にはクマがあってなんだか疲れているみたい。
「ようこそ。ジェダイト領の領主を務めている、ルドベキア=ジェダイトだ。今日はわざわざ来てくれてありがとう」
「し、失礼します。ベリル村からまいりました。カルミアです!」
わたしの返事にルドベキア様は「はっはっは」とわらう。
「そんなにかしこまらなくてかまわない。気楽にしてくれ」
「は、はい!」
かしこまらなくてもいいって言われてもさすがに目の前にいる人がわたしが住んでいる地域の領主だって言われたら緊張するよ。
「さ、ひとまず座って」
そういわれてわたしはルドベキア様の正面の椅子に座る。
「さて、それで今回お願いしたのは」
そのとき、応接室の扉が開いた。
「おとうさま!みてみて!これね!あたしがとったの!」
入ってきたのは手に野菜を持った小さな女の子。白いドレスにはところどころに土がついているけど、髪は金色ですごくかわいい。それにいまおとうさまっていってたけど、もしかして。
「デージー!すごいじゃないか!さすがは私の娘だな!」
「えへへ、でしょ!」
「こほん。旦那様」
使用人さんにそう言われてルドベキア様ははっとする。
「デージー、おとうさまはこれから大事な話があるんだ。ちょっと部屋の外で待っててくれるかい?」
「わかった!あたし、いい子にしてるね!」
そういって女の子は部屋から出ていった。
それを見守ったルドベキア様は改めてわたしの方をむく。
「すまないね」
「いえいえ。あの、今の子は」
「わたしの一人娘のデージーだ」
あ、やっぱり娘さんなんだ。
「かわいらしいですね」
「そうだろう!」
そこまでいってルドベキアさんは真剣な表情をした。
「今回お願いしたいのは、そのデージーに関係することなんだ」
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