第27話 まさかそんなわけないよね

「大丈夫ですか!」

 わたしは急いでパキラさんのもとへと駆け寄った。

「あはははは!!」

 大笑いをした後、パキラさんは体を起こした。

「いやーまさかあの速さで魔法を使えるだなんてね。負けたよ」

 いや、あの衝撃で無事なの⁉

「わたしの奥の手だよ。とはいえ一度使うとしばらく何もできなくなるがね。さて、それじゃあ戻るかね」

 そういってよいしょとパキラさんは起き上がった。

 とはいえちょっとふらついている。

「支えますよ!」

 わたしはパキラさんの肩をとった。

「ありがとね」

 「いえいえ」といいながらわたしはその肩を取る。

 あれだけの実力を持つ武闘家なだけあってその体はがっしりしている。

 いったいどれだけの経験を積んできたんだろう。

「お二人とも!お疲れ様です!お怪我はありませんか?」

 アジェガさんが駆け寄ってくる。その後ろにはほかの村の人たちも控えている。みんな結果が気になっているみたい。

「大丈夫だよ。それよりもアジェガ。今回の件カルミアに任せようと思う」

「と、いうことは」

 アジェガさんが恐る恐るそう聞く。

「ああ、あたしの負けだ」

 パキラさんのその言葉に、アジェガさんだけでなく周りにいたほかの村の人たちからも驚きの声が上がる。

 わたしもよく勝てたなって思う。それくらいパキラさんは強かった。

「そういうわけだからさっそくカルミアと状況を話そうと思う」

 え⁉

「さきに休んだ方がいいんじゃ・・・」

 わたしの心配にパキラさんは首を振る。

「あいてはいつ攻めてくるのかわからないからね。準備は早ければ早いほどいい」

 それはそうだけど。

 あ!そうだ!

 わたしはカンナさんにもらった収納書から回復薬を取り出した。

「あの、この回復薬をよかったら使ってください」

「いいのかい?」

「はい!」

「ありがとね」

 そういってパキラさんは回復薬を受け取って口にした。

「こ、これは!」

 え、な、なに⁉

「どうしたんですか⁉」

「どうしたのって・・・いったいこれはどこで?」

「え?知り合いのカンナさんという錬金術師ですけど」

「カンナ⁉あの壊滅のカンナかい⁉」

 え、かいめつのかんな?何その呼び名

「有名な錬金術師だよ。聡明で寛容、その腕は天下一品とされている」

 たしかに腕はすごいしわたしには優しくしてくれるけど。でもわたしのなかではラークスパーさんと言い争っている印象が強いからなぁ。

「それで、体調はどうですか?」

「ああ!もちろんだよ!それどころか少し若返った気がするよ!支えてくれてありがとね!」

 そういってパキラさんはわたしの肩から離れた。

「さぁついてきて、奥で話そう」

 歩き始めたパキラさんについて、わたしも歩き始めた。

 それにしても壊滅ねぇ。いやー、腕は確かにいいけど、さすがに違う、よね?

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