第6話
運命の日は、突然に訪れた。
見慣れぬ装備を全身にまとう複数の男たちが乱暴に私の部屋に押し入り、無機質な口調でこう言った。
「ミレーナ、貴様をジーク伯爵に対する反逆の罪により、処刑すること決まった。これより我々とともに来てもらおう」
「そ、そんな…!私に反逆の意志など決して…!!!」
反論など一切許されていなかったようで、私は男たちによって腕を後ろに結ばれ、一切の抵抗はできない状態にされた。
…今までにもいろいろな痛い思いはしてきたけれど、手を後ろに縛られるようなことは初めてで、一気に心臓の鼓動が早くなっていく。
今さっきこの人は何と言っただろうか…?確か、私の事を処刑するといったのだろうか…?
けれどこの時、私はあまり焦りを感じてはいなかった。
あんなにも私に温かい言葉をかけてくださったジーク様が、私の言葉も聞かずに処刑を認めるはずなんてない。
きっと直接話したなら、私の言葉を聞き入れてくださるに決まっている。
そうすれば、わたしにかけられたこの罪も何かの間違いであったと判明するに決まっている。
男たちに連れられ、部屋から連れ出されている今の状況にあっても、私の心の中には”絶対に大丈夫”という思いがあった。
だって、私は伯爵様の婚約者なんだもの。
誰よりも伯爵様の愛を受け取る資格があるんだもの。
そして誰よりも、伯爵様の事を愛する資格があるんだもの。
そんな言葉をかけてくれたのは、ほかでもない伯爵様本人だもの。
――――
私が連れていかれた場所は、同じ屋敷の中でありながらも見知らぬ場所だった。
伯爵家の中に知らない場所はないと思っていたけれど、そんなことはなかったらしい。
誰もいないうす暗いその部屋の中央部分にわたしは連れていかれると、逃げられないようにその場にひもでくくりつけられた。
そしてそれと同時に、暗く視界の悪かったこの部屋の中に明かりがともされた。
…明かりがともされたことで、この部屋の事がようやく理解できた。
私を中心にして、いろいろな人たちが私を囲うように椅子に腰かけて座っている。
それはまるで、私を見世物にしているかのようだった…。
全部で数十人はいるだろうか?顔を見る限り、地位の高い貴族や上流の生まれの人たちのように見える。
そしてその全員が、私を見て薄ら笑いを浮かべている。
…まるで、これから起きることを心待ちにしているかのように…。
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