悲史と落つ雨

鬼ヶ原大

悲史と落つ雨

目覚めればけぶるTOKYOいにしえの雨安居うあんご窓にうつる心地す


あの夏の日に打つ雨の止みて後ゆれる小さき花のまほろば


自灯明じとうみょう萌灯明ほうとうみょうとつぶやける戯れのままこもる部屋かな


同世代だけれど違うセカイ線にいて交わることのないもの


クチナシの花我が同志! などと戯れに思い立てど口なし


すれ違い道ゆくあやかしの目にも笑いかけたる子の愛おしさ


糸のごと降る雨の音なき音に似たふみ心染こころしむ音なり——


深々と吸えば涼気に胸がすく日がな一日、雨読の日かな


悲史悲史ひしひしと落ちる長雨ちょっとした伝奇・伝承調べる夜に


もの思う夜しんしんと更けてゆき月へと帰りたく南無阿弥陀

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悲史と落つ雨 鬼ヶ原大 @daionigahara

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