第4話 邪気
「さてさて、口の利ける花嫁ちゃんなんて久々だ。着物がぼろだね。真っ白な
「は、はあ……」
呪具の中から、使えそうな調度品を
「かわいーかわいー。お腹はすいた? 人間が食うものはさすがに外に行かないとだめだな」
「い、いえ、食欲があまりなくて……身体の中になにか入れるのはどうにも苦手で」
「気持ちは分かるけど、小花ちゃん細すぎじゃない? だめだよ、ちゃん食べないと」
「こ、これは仕方ないんです~
「……そうなんだ、じゃあ、爪がほとんど剥げているのは?」
「あ、や、やだなあ気づいちゃいました? 恥ずかしいな~これは
てへへ、と小花は頭をかく。その瞳の中に、螺旋のような邪気が渦巻く。唐突に、蝕神は小花を抱きしめた。
「わっ、わぁ、しょ、蝕神さま! ま、まだ私、お嫁さんになる心の準備がっ……!」
「なんにもしないって~まったくひどいことするよなあ! オレがちゃんと大事にしてあげるから。傷ついた心と身体に効く一番の薬は愛だからね、愛」
「え、ええ、思ったより蝕神さまって気障で紳士なんですね。可愛いなんて言われたのも初めて。て、照れちゃう」
ふ、と蝕神は笑みを消し、小花の顔を覗き込んだ。
「本当に、よく自我を保っていられたものだ。とっとと正気を失ったほうが楽だったろうに」
黒木家の
「だって、私、宝物がありました。自分の名前がありましたから。名前さえあれば、犬にも猫にも狐にも乗っ取られたりしないです。わたしは〝わたし〟なんだから」
にっこりと無邪気な笑みを浮かべる小花の身体から。
泥のような邪気が黒煙を吹いた。
──真っ白な死装束を真っ黒に染めるほどの。
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