6日目


 国家反逆罪で打ち首の覚悟を決めていたが、どうも様子がおかしい。

 私は捕縛を解かれぬまま、豪奢な廊下を歩かされていた。


「おお、麗しき乙女! ようこそ我が城へ」


 私を出迎えたのは昨夜のヒョロヒョロ男だった。

 包帯だらけの彼はひざまずき、


「プリン・ヴァーティ、このパヴァティの王子です」


 拘束されたままの私の手にキスをした。


 やっぱり捕縛は解かれぬまま、今度は中庭の椅子に座らされる。


「僕は強い女性が好きなのです。我が母シァにも言い聞かせられました。娶るなら身分に拘らず、魔王を倒せそうなほど強き者を選べと」

「まあ、強いだなんて、おほほ…わたくしなどとてもとても…」

「その強さで胸が大きいのもいい」


 私はテーブルの下で手枷を外そうともがいていた。


「抵抗は無駄ですよ、バスト・エルゼン。元竜炎団の狂える騎士」

「なんだその二つ名は…!」

「あなたの情報はすべて調査済みです。どうか僕の妃候補になっていただきたい」

「妃候補だぁ!?」


 言うに事欠いて補欠扱いとは!


「プライドが許さん! 願い下げだ!」

「宿や食事に困ることもありませんし補償金も差し上げます」

「幾ら? いや、聞いただけだ、何を言われようが我が誇りまでは売り渡さん!」


 金額を耳打ちされる。


「少し考えさせてくれ」


 そういうことになった。

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