2日目
日付も変わろうとしている深夜、声をかけて来たのはいかにも酒に酔った無頼漢。
「俺と組まないか」
視線は当然、私の胸に注がれている。
「いい仕事があるんだよ。一日でこれだけ」
手で金額を示してきた。まあ悪くない。
なにより路銀は怪文書作成と酒のために使い果たしている。なぜ私はあんなことを。
「私を竜炎団のバスト・エルゼンと知っての頼みだろうな」
「なんだって? あ、あんた、そうだったのか」
自分を追放したパーティの名を出すほどむなしいものはない。
「それなら大歓迎だ、ボーナス上乗せもあるかもな。俺の名はゾック」
「依頼内容をまだ聞いとらんぞ」
「国家転覆だ」
「なるほど、ハッハッハ!」
私はその言葉を冗談と思い、笑いながらジョッキを空にした。
酒の席の記憶はバッチリある
気付くと馬車に乗っていた。
目隠しを外そうとすると「やめておけ」と止められる。
「着きましたぜ」
「ああ」
迂回を重ねただけでまだ国内だろう。
目隠しを外された。埃っぽいバラック。
リーダー格らしき禿頭の男がこちらをジロリと見て、言った。
「そっちで化粧と服を整えて、要人に取り入れ。それがお前の仕事だ」
「こ、この私に売女をやれと言うのか……?」
「
頭にきた。
「ああ良いとも、この胸でどこへとも取り入って、国家元首の素っ首獲って来てやるわ!」
「いやそれでは困る」
「捕らえるなら生きた人質のほうが」
「ええいうるさい!」
私、バスト・エルゼンは渾身の力で叫んだ。
「好きで胸がでかくなったわけではないわァ!!」
泣くなよ、私。
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