第15節 読みやすい文章は作れる!(前編)



 色々と小説を読み漁っていると。

 たまーに、読みにくい文章に遭遇する時がありますよね。

 

 文が詰まっているとか、漢字が読めないなんかが一番の原因として考えられます。 そのほかにも、人称(視点)が定まってない、二重表現が使用されている、文末の重複が多い、てにをはが上手く扱えていない等々……理由は様々です。


 私自身、未だに試行錯誤しながら書いています。

 それでも、読みやすい文章の完成系には辿り着けていません。というか、実際のところは完成なんてないのです。読み手によっても変わるので。


 ただ、それでも作家としては読みやすい文章を書く、といったことから逃げるわけにはいきません。読者さんを増やすには重要なことです。


 ということで、読みやすい文章の作り方について考えてみましょう。



①行頭を空けよう


私はこれが第一にやるべきことかと思います。このように行頭が空いていない文章は、長文になるにつれて、文章が詰まっているという印象を覚えさせます。

Web小説ではそれなりに多いですし、作風と言われてしまえば何も言えないのですが……私個人としては、ちゃんと行頭が空いている方が見栄えも良いと思います。

特に今のように改行も少ないと、読みづらくて読む気が失せてしまいますからね。


 行頭の空け方は、全角スペース1マスが好ましいです。

 特にスマホでは誤って半角スペースになってしまうことも多いので(体験談)、気を付けましょう。Simejiだとスペースキーを左フリックで全角スペースが入ります。



②改行を駆使して空行を作る


 こちらは以前、別の節でも話したかと思います。縦書き表示で読むことが少ないWeb上では、適度に空行があった方が読みやすいのです。

 2~4行を目安に空行を入れてみましょう。入れる箇所は雰囲気で構いません。文章同士の繋がりを気にして空行を入れられれば最高です。



③読めない漢字にはルビを振り、意味が伝わらない単語を近い文に二つ以上入れない


 読めない漢字にはルビを振るというのは言葉の通りです。


 例えば、「嫩緑の芽」や「輸嬴を争う」。あなたは読めますでしょうか。

 答えは嫩緑どんりょくに、輸嬴ゆえいです。多分、このレベルをぱっと読める人は少ないかと思います。意味が分からないという人も多いかもです。

(ちなみにどうでもいいですが、嫩緑は新緑の色、輸嬴は勝敗、といった意味です)


 なかなか読めない漢字はなるべく避け、使うにしてもルビを振りましょう。

 ルビがないと、読み手として意味を検索しようとしても難しいですし。

 あとは登場人物の名前が特殊な読み方の場合も、ルビがあるといいですね。



 そして、意味が分からない単語を近い文に二つ以上入れないということですが──これも読みやすさに直結してきます。例文で示してみますね。

 晏如あんじょ、という言葉の意味に注目して読んでみてください。



・彼女が著做きなす雰囲気は変わらず晏如あんじょとしており、駭魄がいはくとする。こちらがどれだけ敵意を持って接しても、藹然あいぜんとしているのだ。



・彼女が纏う雰囲気は変わらず晏如あんじょとしており、毒気を抜かれてしまう。こちらがどれだけ敵意を持って接しても、ゆったりとした姿勢が崩れないのだ。



 ……やりすぎなくらいにしてみましたが、どうでしょうか?


 一つ目の文ではわけが分からない人も多いかと思います。さくっと分かる人はかなりの語彙をお持ちの人です。自らを誇りましょう。きっと純文学とか書けます。


 二つ目の文で、なんとなーく意味が分かるような気がしないでもないんじゃないでしょうか。晏如とは、やすらかで落ち着いている様を示す単語です。

 少なくとも、読む手が止まる回数で言えば、一つ目の文より少ないはずです。


 このように、意味が分からない単語が近い文に複数使用されていると、それぞれの言葉の意味が推測できません。逆に言えば、私たちは文章を読むときに、分からない単語はある程度、前後の文脈から推測してそのまま読み進めることができます。


 それを阻害してしまうのが、分からない単語の詰め込み過ぎです。

 難しい単語を使用することで文章としての美しさを追及する。一概に悪いこととは言えませんが、どうしても読みづらさは着いて回ってきます。


 難しい単語を使う際は、その文と前後の文章くらいは分かりやすい表現を使用して、読者が言葉の意味を推測できるようにしながら執筆しましょう。



 長くなりそうなので後編に移動しますね。

 その前に、本節のまとめです。 

 


・行頭は1マス開けよう(半角スペースに注意!)

・文章、2~4行ごとに空行を入れてみよう

・難しい漢字にはルビを振ろう

・意味の分からない単語は、近い文章に一つまでにしておこう


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