短編こわーい話

第14話 幽鬼エレベーター

夜の弥富市、廃墟ビルに佇むエレベーター。若者の中で噂される怪奇現象に挑む者が現れた。彼は古びた制服をまとい、エレベーターに身を委ねた。しかし、ボタンを押すことなく、エレベーターは自らの意志で階を選び、次第に異次元へと変貌していく。怨みを背負った霊が現れ、過去の出来事が幻想的な光景となって蘇る。彼は廃墟となったビルの奥底で、愛知の地に潜む冥界の秘密に触れることとなる。

夜の闇が、弥富市を覆い尽くしていた。その中に佇む廃ビルは、荒廃と静寂の中で秘めた謎を抱えていた。若者たちの間でささやかれる噂―それは、ビルの一室に存在するエレベーターが、夜な夜な怪奇現象に巻き込まれるというものだった。

ある晩、勇気ある探検者がその噂に挑むことを決意した。彼の名前は悠真。古びた制服を身にまとい、ビルの影に消えていく。足音が響く廃墟の中、悠真はエレベーターに辿り着くと、その扉は不気味に開かれた。

エレベーターのボタンを押す前に、彼は胸騒ぎを感じた。しかし、彼の好奇心が勝り、扉が閉まると同時にエレベーターは自発的に動き出した。数字が点滅し、異次元への扉が開かれる。

最初の階では、隣のビルからの囁きが聞こえ、悠真はその影に追い立てられるように次の階へと進んだ。すると、足音が不気味なリズムで彼を導いていく。廃ビルの奥深く、かつての出来事が蘇るような霊気が漂っていた。

エレベーターは予測不可能な動きを見せ、悠真は次第に現実と夢の狭間に引き込まれていった。霊魂たちは彼に囁きかけ、過去の因縁を紡いでいく。悠真はビルの奥底で、愛知の地に潜む冥界の秘密に触れつつあった。

時が経つにつれ、彼は自らの過去と繋がり、ビルが抱える怨みの正体に気づいていく。愛知の夜に隠されたエレベーターの秘密が、彼の運命を不可逆に変えていく中、悠真は怨念に満ちた冥府の扉を開き、その先に広がる闇と対峙することとなるのだった。

悠真がエレベーターに巻き込まれたのは、彼が知らず知らずのうちにその場所に縁があったからだった。彼はかつて、このビルで働いていた職員であり、エレベーター内での出来事に関わっていた。しかし、その過去の出来事は彼の記憶から深く押しやられていた。

ビルが廃墟となり、彼がその場所を訪れることとなった時、霊魂たちは彼の過去を呼び覚まそうとしていた。悠真の無意識がエレベーターを通して昔の出来事を引き寄せ、その霊的なエネルギーが怨念となって具現化したのだ。

彼が次々と辿る階は、かつての同僚や出来事を象徴していた。足音や囁きは、彼がかつて置かれた状況を再現し、過去の罪悪感や未解決の感情を浮き彫りにしていた。エレベーターが予測不可能な動きを見せるのも、彼の運命を変える重要な出来事に接触させるための霊的な導きだった。

最終的に悠真がビルの奥底で直面する冥界の秘密は、彼がかつてなされた不正や誤りに関係していた。彼が無意識にエレベーターに引き寄せられたことは、過去の償いを果たし、冥府の扉を閉じるための試練であった。悠真はその運命に立ち向かい、愛知の夜に潜む闇の中で自らの罪と向き合うことになった。

悠真が直面する罪は、かつて彼が職務中に遭遇した一つの事件に起因していた。数年前、彼はビル内で発生した火災の際、他の従業員を助けるために焦りながらも避難を支援していた。しかし、その中で一人の同僚が取り残され、救助の手を伸ばすことができなかった。

その同僚は炎に包まれ、絶望的な状況に見舞われた。悠真は無念の思いとともにその場を後にし、その出来事を忘れようとしてきた。しかし、その同僚の霊がエレベーターに宿り、悠真の無意識に訴えかけていたのだ。

エレベーターの各階で悠真が目にする幻覚や聞こえてくる声は、彼の罪悪感や責任の重荷を具現化したものだった。彼は自らの怠慢が同僚の死に繋がったことを理解し、その出来事から逃れることができない現実に向き合わざるを得なくなった。

最終的に悠真はビルの奥底で、同僚の霊と対話することになる。彼の罪を受け入れ、償いを果たすために、冥府の扉を開く試練に臨む覚悟を決めた瞬間、ビルは幻想的な光に包まれ、霊たちは静かに消え去った。彼の罪悪感は解放され、愛知の夜に闘い悔い改めることで、悠真は新たな道を歩み始めることとなった。