転生冒険者が元相棒の養われっ子になってた件 ~光の女神と黒い魔導師~
円香
第1話 幼女と冒険者
「エリー!!前に出るんじゃねぇよ!!邪魔だ後ろに下がってろ」
「ぢぶんの身くらいぢぶんで守れましゅよ」
わたしは、目の前の狼にしか見えないのに、一つ目の魔物の前から逃げ出した。
すると、今度はフィニアスが剣を振り回して、前に出て来た。
風の呪文で魔物を縛り付け、よーく斬れる剣で真っ二つだ。
「これで、今日の食料には、ありつけたぜ」
「こんな気持ちの悪い、肉はいらないでしゅ!!街で美味いモノ食べさせなしゃい」
わたしは、ふんぞり返ってフィニアスに言った。
「リリベット……せっかく可愛い名前を付けて、綺麗な服を着せてるのにその喋り方をなんとかしようぜ。エリアードと全く同じ口調だ」
その言葉にわたしは、カチンときた。
わたしは、見た目こそ五歳児で女の子のリリベットだけど、頭の中は、22歳のエリアード・フリードリヒだ。
「誰のせいでこうなったと思ってるんでしゅ? わたちはあなたを許してませんよ」
そう、フィニアスこそ諸悪の根源。
「うぅ……」
フィニアスのお得意の泣き真似だ。
こーんな平原で、大の大人が泣き真似なんてしたって、誰も来やしないさ。
「お嬢ちゃん、パパを困らせるのは良くないよ」
あっ!!通りがかりの人がいた。
わたしがが振り向いて、声のする方に顔を上げると、栗色髪がボサボサの男が、斧を二本を片手に持って、こっちにやって来る。
「ツイン斧のギルゼルドじゃん!俺だよ、フィニアス・ブランだ!懐かしいなぁ」
わたしはギク!!っとした。
冒険者仲間のようだ。この五年のうちに、知り合ったのかな? わたしの知らない人だった。
かつては、わたしも冒険者の一人だった。
今は、こんな幼女の格好をしているが……。頭の中は、エリアード・フリードリヒとしての22年間の記憶がある。
「銀のフィニか!? 相変わらず、良い男だな~顎の無精ひげを剃れば、女がほっとかんだろうに!」
「これは、俺のポリシーだ。髭の生えるのが遅かった俺のな!」
確かに出会った頃のフィニアスは、本当にただの美少年だった。
何かやらかして、故郷を追われたらしいけど、それは今なら簡単に察することが出来る。
「おじちゃま」
わたしは、とにかくこの気の毒な人をフィニアスから引き離すことを考えて、早くこの場を立ち去ろうとした。そして思わずギルゼルドに声をかけてしまった。
「お嬢ちゃん、何だい?」
ボサボサ頭のギルゼルドは、わたしに目線を合わせてくれた。
なかなか紳士的な男だ。
「ここから、街まで遠い?」
「そうさな、一番近いムンノの町まで二日と半日だな」
ギルゼルドという男は、そう言ってわたしを抱き上げた。
それを見て、慌てて奪いにかかるフィニアス。
ギルゼルドは、変な顔をしてフィニアスを見た。
「悪いな!! リリベットは人見知りが激しいんだ。泣き出す前にムンノに行くとしよう」
わたしは、内心ホッとした。
「おいおい、今からか?」
ギルゼルドは、不思議そうに言うけど、フィニアスはかなりの魔法の使い手だ。
「風に乗って行けば、夜には着くだろ。お子ちゃまを野宿させるわけにもいかないからな」
「銀のフィニ。娘が出来たんだな。大事にしてるじゃないか」
「まぁね……」
フィニアスは苦笑する。
フィニアスは、幼女の姿のわたしを抱きながら、ギルゼルドも浮かせた。
ああ……不味い……今夜のお相手は、彼だとロックオンしたようだ。
10代のフィニアスは、細身の美少年のイメージだったが、27歳になった今では、冒険者ギルドでの地位も上がるにつれて、中身も外見も擦り切れてきたんだ。 ……彼の性癖も……恋愛対象者が男で、しかも趣味が夜這いとは……幼女の言葉など大人は聞くまい。ましてや「夜這いに気を付けて」など……。
わたしは、気の毒そうにギルゼルドを見た。
夜遅く、ギルゼルドの部屋から、「ギャーー!!」と悲鳴が~!!
ああ……
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