幕間: 迷宮内、魔王様の控え室

「どうして勝手に出撃したのっ、駄目だって言ったでしょっ」

「ふぁっへまろうはまふぁ」

「ああもう、『主よ我が願いに答え、我が友の傷を癒やしてください』」


 シュワワワワ。


「あ、治った、ありがとう魔王様。ブレスを破裂させられて、口の中がズタズタになってた」

「本当にもう、勝手にマレンツを殺しに行くなんて」

「だって、魔王様の敵だし、久しぶりだから喜ぶ顔が見たくて」

「良いのよ、もう、私もキアラの顔を見れて嬉しかったから居るだけでいいのよ」

「うん、先走ってごめんなさい」


 バリバリッ。


「美味しいな、この土塊みたいなの」

「クッキーよ。それよりマレンツと戦った感想はどうだった?」

「あいつ、【着火】ティンダーが使えるだけって言ってたが嘘だった。爆発魔法とか雷撃魔法とか使えてた。マレンツの雷は痛かった」

「爆発魔法は【着火】ティンダーで水を破裂させたのよ、水蒸気爆発っていうのよ。火山でよくあるでしょう」

「あ、あの白い煙の爆発なのかっ! あれは元は水なのかっ!」

「そうよ、雷の方は雲を作って誘発させたみたいね」

「雲? 雲は空に出来る、地底には出来ない」

「霧があるでしょ、あれが空に昇ると雲になるわ。水蒸気爆発を使って雲を発生させて誘発させたのね。よくとっさに……」

「あれも水なのか、すごいな水」


 ぽんっ。


「解った、あの雷はデズモンド領の奇跡の正体だわ」

「ん? んんん?」

「マレンツ博士の実家のデズモンド領で空前の大豊作が起こったの、あの手順で雲を作り放電させたんだわ、畑の上で」

「畑の、上で? なんで?」

「高圧の雷で大気中の窒素が硝酸に変質して降るのよ、それは植物の生長に欠かせない栄養素なの。なるほど何回もやったことがある手順でキアラを迎撃したのね」

「よくわからん」

「人間は小さい魔法を組み合わせて大きい事をやり始めているって事」


 バリバリ。


「まだマレンツを殺さないのか?」

「そうねえ」

「気に入っているのか?」

「……ちょっとだけね」

「魔王様の悪い癖だ」

「知ってるわよ」

「魔王様は昔の人間と一緒に古代魔法を作って、世界が滅びかけた、人は愚かだ」

「魔物も愚かよ」

「魔王様が導いてくれているから、魔物も竜も上手く行っている」

「私は神様じゃないのだけれどね」

「神々は我々に無関心だ」

「そうね」


 カラカラ。


「クッキー無くなった」


 ガラッ、ビリビリ、ザザッ。


「ありがとう、クッキー美味い」


 バリバリ。


「せっかく迷宮都市に来たんだから色々と楽しみなさいよ、お金は上げるから」

「早くマレンツを殺して山に帰りたい」

「久しぶりなんだから、ゆっくりしてなさいよ」

「わかった」

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