歩いていたら寒くなったので異変を探してみた

@darefumi

プロローグ

私の名前は木端椰子殻(コッパ ヤシガラ)。人は私をミステリーハンターと呼ぶ。


今私は駅を出て海老天商店街に向かっている。最近この辺りは活気がなく、気のせいか通りの人が少ない。それに、なんとなく寒い。寒いといっても気温が低いから寒い訳では無い。寒気を感じるというやつだ。なんとなくその場所に訪れるとスポットとして寒い。その場所とは、例えば商店街の狭い路地や、公園のトイレの裏とか、人の好まない場所である。周りより一段と照明が暗く、鳥のフンで汚れており、何か嫌な匂いが漂う。私は霊は見えないが、観察力には優れている。道端や建物のちょっとした変化などが、勝手に目に入ってくるのだ。

そういう時には、えてして異変が生じている可能性が高い。わたしはそういう場所に行くと、まず両腕、それから両足、最後には背中全体に寒気を感じる。長いことこの寒気を感じていると、体調が悪くなってしまう。関節が痛くなり、食欲が減退してしまうのだ。それから十分な睡眠が取れずに、寝不足で元気を無くしてしまう。異変のある場所に居て良いことは何も無いのである。



ようやく商店街の入り口に着いた。少し歩き疲れたな。ひとまず商店街入り口の茶屋でぜんざいを頂くことにした。パクパクとぜんざいを食べていると、隣の席で3人組の女性が噂ばなしをしているのを耳に挟んだ。

「それが、また来たらしいわよ、あの女」

あの女というのは最近商店街によく現れる女性のことらしい。なんでも女性はみすぼらしい服を着て、店の前に来てうろうろとしては、下を向いてブツブツと何かを呟いているらしい。

「わたしに…をおくれ」、女性はなんでもそのように呟いているらしい。最近では珍しい物乞いだろうか。しかし、彼女が何が欲しいかは分からないということだ。しかもこちらから親切に何が欲しいか聞くと怒って去っていくという話だ。


どうもその話を聞いていると、これはこの町で起きている異変と関係がありそうだ。その女性はおそらく人間では無い。彼女が商店街に来て異変を撒き散らしている可能性がある。彼女は何かを恨んでいるのかもしれない。それに女性が探しているものとは一体何だろう。少し調べてみる必要がありそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る