第14話 シェイン視点
彼女が売っているのは低級の回復薬だけであったが、市場で売るのであればこれ以上の等級の魔法薬では売れないことを見越してのことだろう。それに低級の回復薬と言っても安いものではないが価格が高い分、効果は普通の薬と比べ物にはならない。
私は低級の回復薬を二つ購入し学園へと戻ったのだった。
学園に戻ってから一通り鍛練をし、疲れが溜まっている状態で先ほど買った回復薬を飲んでみることにした。
「っ!これは…」
驚くしかなかった。
今までいくつもの回復薬を飲んできたが、ここまで早く効果が出るものは初めてだった。しかも低級であれば疲れが半分ほどしか回復しないはずなのに完全に回復したのである。以前飲んだことのある上級回復薬と同じ効果があったのだ。
私は慌てて叔父の元へ向かい、まだ身元の調査は終わっていないが連れてきたい人がいることを伝えた。その時にもう一つの回復薬を叔父へと渡し、叔父もその場で飲んだがとても驚いていた。どうやら痛んでいた古傷の痛みが無くなったと言うのだ。
叔父からもひとまず身元の調査は後でいいからと許可をもらい、次の日にまた彼女を訪ねたのだった。
◇◇◇
彼女から教師への誘いに承諾をもらった後すぐに彼女の身元の調査を始めたが、報告を聞いた私は怒りを覚えた。
生家であるドルマン国のアルレイ伯爵家での彼女の扱いは酷いものであった。それにそれより上をいくのが嫁いだ先であるカリスト侯爵家での扱いだった。
女主人として認められず毎日遅くまで働かされていたようだ。食事もままならず、まともな生活が送れていなかったことは想像に難くない。そして結婚して三年後、自ら婚姻無効を証明してすぐにこの国にやってきたようだ。
(しかし最近になって侯爵家の使用人が次々に辞めさせられているみたいだが…。もしかしてカリスト侯爵は彼女の扱いに気がついていなかったのか?ようやく気がついて使用人を罰したとしか思えないタイミングだ。でも今さらでも罰するのはなぜだ?本当は彼女のことを大切に思っていたとか?…いやあり得ないな。だが隣国の人間が調べてもすぐに分かることなのになんて愚かな男なんだ)
まだ二回しか会っていないがそれでも素敵な女性だと俺は気になって仕方がないのに、元夫はこんな素晴らしい女性を自らの行いで逃がしてしまったなんて本当に愚かだとしか思えない。
(俺だったら彼女を悲しませたりしないのに。…ってなに考えてるんだ俺は!)
気になる女性に出会いどうやら俺は少し浮かれているようだ。
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