九郎の鎌倉怪談

玄栖佳純

プロローグ

 こんにちは。みなもとの九郎くろう義経よしつねです。生まれたのは1159年で死んだのが1189年です。現代の人たちからは鎌倉時代の『悲劇の英雄』と言われています。でも鎌倉時代は平清盛の平家が滅んだ1185年から徐々に始まって、兄上のみなもとの頼朝よりともが征夷大将軍になった1192年に完全に鎌倉時代になったって感じらしいので鎌倉時代には生きていません。ちなみに平家を滅ぼした時の海の総大将はボクですけど。だから鎌倉時代のはじめっぽい頃は生きてますけど実感はあまりないです。平安末期の人です。

 ただ、悲劇の英雄って聞いて、え? ボクが? って感じです。英雄もどうかと思いますが、悲劇がなんか嫌。そういうのは誰かの評価であって、ボク自身はそんなに悲しくはなかったんじゃないかなあ? ちょっと悲しい程度?

 後世の皆さまがボクのことをそう評価したのだから、そうなのだろうと思うけれど、ボクはちょっと不満です。


 ボクのことはこれくらいにして、あんまり関わりはないのですが、現在の鎌倉の怪談話をしてみようと思います。そもそも、鎌倉は兄上が御造おつくりになった鎌倉幕府のあった場所で、生きてた頃のボクがいたとしても数年程度、大騒ぎする前(源平合戦でボクが参加した一ノ谷・屋島・壇ノ浦のそれぞれの戦い)にちょこっとだけです。鎌倉周辺にはそこそこボク関連の遺跡が残っていますが、鎌倉にはあんまりないです。京都とか平泉とかならもうちょっと関わりあるんですけど。

 だからまあ、ちょっとだけ。


 そんなに怖くないです。よく言われるのですが「何それ、怖くない」って。

 ただ、深く考えると怖いかもしれません。


 ボクは怖いです。頭の中ではとっても怖いお話ができてます。それを知ってるのボクだけなんです。ボクは怖がりなので『これ以上話すと一番怖いのボクじゃん』ってなって話せなくなります。

『これ話すと、なんかとんでもないモノにすっごく怒られそう。怒るていどならいいけど』って感じです。

 だから怖い話はみなさんにお届けできません。ボクの話を中途半端に聞いて、想像して怖い思いをして下さったら嬉しいです。


 ボクはホントに怖いんだけど……。

 怖くないって思ってる人は、きっと鈍感なんだと思います。


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