群馬県 伊香保温泉石段街での怪異

七倉イルカ

第1話 プロローグ


 プロローグ


 夏休み。

 ぼくたち家族は、群馬県にやってきた。

 群馬県には、おじいちゃんの家があるのだ。


 いつもなら、おじいちゃんの家に泊まるのだけど、今日は違った。

 「わしの足腰がしっかりしている内に、孫と一緒に、伊香保の石段街をのぼってみたくてな」

 おじいちゃんがそう言い、同じ群馬県でも、少し離れた場所にある、伊香保温泉の旅館に泊まることになったのである。

 孫とは、もちろんぼくのことだ。


 昼は榛名湖を観光し、伊香保温泉街についたときには、夕暮れになっていた。

 ぼくとおじいちゃんは、石段口のバス停の近くで車から降りた。


 「お父さんたちは、おばあちゃんを連れて、先に旅館に入っているからな」

 運転席の窓を開け、ぼくにそう言ったお父さんは、おじいちゃんに目を向けた。

 「お父さん。無理しないでよ。

 何かあったら、スマホで連絡してね。

 すぐに、迎えにいくから」

 「わははははははは」

 心配そうなお父さんの言葉に、おじいちゃんは豪快な笑い声で応えていた。


 「おじいちゃんの言うことをちゃんと聞くのよ」

 助手席のお母さんも、車の中から声をかける。

 おばあちゃんは、後部座席でコニコニと笑っている。

 ぼくは「まかして!」と、元気に返事をした。


 車を見送ると、ぼくはおじいちゃんと一緒に、伊香保温泉の石段へと向かった。

 「出発!」


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