第六話
犬将軍が総べていたころの江戸にケチなことで有名な男が住んでいた。その守銭奴ぶりは相当なもので、賭け事も遊ぶこともせず、寝ることこそ最も金を貯める唯一の方法だとの考えを持ち、初詣に行けば賽銭を投げる代わりに、賽銭箱に入らなかった小銭を地べたを這いずり回ってかき集めるなどしていた。しかし己が払う側になるとその銭入れは石のように固く口を噤み、がんとして開かなかった。
そんな男も歳をとるにつれて丸くなり、死ぬ寸前に神社に願った。この身は世間様の役にも立たず今日まで人に辛く当たってきました。最後に人様の役に立たせてください。
すると寛大な神様は願いを叶えた。男の身体は一瞬にして金貨となり、朝方訪れた住職が発見したのは賽銭箱の前に積まれた金貨の小山であった。
珍しがって多くの人が見に来たが、皆出所不明の貨幣を恐ろしがって遠巻きに見守るだけである。そこで、住職は金貨をどこかに埋めた。未だに見つからないのはその金貨が常に動いているからなのだとか。
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