第二編

第一話

 世界のどこか、片田舎の真っ昼間。

 日傘をさした婦人が列車が通り過ぎるのを待っていた。

 しかしいくら待てども車両が途切れる気配がない。

 先頭車両はとうに地平の向こうに消えた、最後尾はまだ見えない。

 日が落ちた。日が昇った。三日が経った。一週間、一ヶ月が過ぎても列車はいまだ走り続ける。

 そこで人々は列車を覆うような橋をつくった。隙間を土で塞ぎ、走行音を防いだ。やがて土が堆積し草木が生え、列車は完全に見えなくなった。

 列車近くの場所で地面に耳をつけると、今でも走り続ける列車の音が聞こえるらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る