第24話 空巣

「あれ、やられてたんだ?」

北沢がソファーから身を起こす。

「…柚希は?」

北沢の質問に桑川さんはドアの向こうを示す。柚希の死体を安置している部屋だ。

「…そっか。てか私なんですぐ復活出来なかったんだろ。」

「あぁそれは彼女の能力だね。おそらくだが、自分の効果範囲内の能力は完全になくなるんだ。だから彼女が離れるまで能力が使えなかった。」

「なるほどね。」

「榊原さん、あいつ、誰かに頼まれたような口ぶりでしたけどなにかご存じですか?」

「うん、わかりにくいけどあれはまれにいる反社会的組織かな。奴らは欲が深いからね、商品を狙っているんじゃないかな。」

「でもなんで榊原さん一点狙いだったんすかね?」

「あの人、能力無効化するんだから相手は相当榊原さんの事を警戒してるんじゃないですかぁ?」

「かなりの強敵だった。おそらく琴方で勝てるのは榊原さんだけだろう。榊原さん、明日は矢花といてください。柚希がやられてしまったので。」

「了解了解。」

柚希は復活するとはいえ俺たちの力不足で殺された。そういう趣旨の大会とはいえ仲間が死ぬのは辛いな。

「よし、じゃあ解散としますか。全員闇討ちに気をつけて。」


解散後、それぞれ帰路につく。全員を見送った後、俺は琴方に戻ろうと振り返る。烏が鳴いている。柚希、最後まで戦いたかったのだろうか。それともなんとなく参加しただけなのか。分からないが俺は最後までいて欲しかった。しばらくして布団に入るとどうも外が気になって眠れない。やけに烏がうるさい。何事かと思い窓を開けると、そこには烏がいた。いや、おそらく烏が大量にいる。黒くてあまり視認しにくいが確かにそこにいる。もしかしなくても能力だろう。仕方が無い。このままだと安心して眠れない。退治しに行こう。まあ他の動物相手なら簡単だ。

『ハートビートアレンジ』

周囲の生き物の心拍数を自分と同じに出来る。烏は人より心拍が速いはず。急にゆっくりになったら酸欠になる。さて、烏たちを操ってる奴がいたら俺の行動は放っておく訳にはいかないだろう。そろそろアクションが起こると思うんだが…。


おかしいな、数分間待ったが何も起こらない。何もないならないで不安だ。しかし打てる手段があるわけでもない。一度琴方に戻ろう。夜で冷えた鉄製の取っ手を掴み中に入る。すると、ドアを開けた瞬間に烏が一羽出てきた。開けっ放しの窓から入ったのか?それとも操ってる奴がいて、何かを企んでる?

不穏だ。このまま寝たら寝てる間にやられるかも知れない。今日は寝ずに夜を明かそう。しかし本当に相手の思惑が分からない。また榊原を目的に来たのか?今日は長い夜になりそうだ。

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