第9話 やっとジャンヌを手に入れたと思ったのに~シャーロン視点~

「分かったよ…本当に上手く行くのだろうね?」


「ああ、任せて。僕は君たちの悪事を見つけ、白状させただけ。グラディオンはたまたま街で、悪の組織と接触してしまい、大けがを負った。そこにたまたま通りかかった僕の執事が、助けただけ。僕たちとグラディオンの事件は、全く別のもの。執事にもそう説明させるよ」


たとえグラディオンが何か言って来たとしても、しらばっくれれば問題ない。これでうまくいく。


グラディオンが命をかけて手に入れた証拠を横取りした事への罪悪感はあったが、僕は何が何でもジャンヌが欲しい。だからグラディオン、許してね。


そっと心の中で、グラディオンに謝った。


その後僕は、証拠を手に、彼らを連れて隊長の元に向かった。僕が上手く口利きをしてあげたおかげで、彼らは3ヶ月の謹慎程度で事なきを得た。


もちろん、ジャンヌからも遠征から帰って来た騎士団長からも感謝され、今回の件を理由に、騎士団長を上手く丸め込み、ジャンヌの婚約者になる事が出来た。一応僕から頼んだのだが、なぜか親同士が決めた婚約という事になったが、その点はどちらでもいい。


さらに…


幸いグラディオンも命に別状はなく、すぐに意識を取り戻した。グラディオンは、僕が手柄を横取りしたことに関して、何も言わなかった。それどころから、僕とジャンヌが婚約をする事を知ると


“ジャンヌを幸せにしてやってくれ”


そう悲しそうに呟いていた。こいつ、ジャンヌが好きだったくせに。こうもあっさり諦めるだなんて、たいしてジャンヌの事が好きではなかったのだな。


ただジャンヌは、グラディオンの怪我を非常に心配しており、お見舞いに行っていた。それが無性に腹が立つ。それにこれ以上、ジャンヌを男どもの多い騎士団なんかにいさせたくはない。


今回の事件で完全に僕に惚れたジャンヌ。そんな彼女に、これからは僕の婚約者としてふさわしい令嬢になって欲しい旨を伝えた。そして、騎士団も辞めさせた。


もう二度と、あんな男どもの多い場所になんて、ジャンヌを行かせるものか。もちろん、グラディオンにも会わせない。


ただ、なぜかジャンヌと婚約しても、僕の心にはモヤモヤが残っていた。


そう、僕はこの5年、ずっと寂しい思いをしていたのだ。ジャンヌは僕だけを見てくれず、他の男たちと常に仲良くしていた。その間、僕がどれほど悲しく寂しかったか。


そうだ、ジャンヌにも僕と同じ悲しみや寂しさを味わってもらおう。そして反省してもらうのだ。僕だけを見てくれなかった、騎士団時代の事を。


騎士団長には“ジャンヌを絶対に幸せにします。絶対に泣かせるような事はしません。この命にかけても”なんて臭いセリフで必死に訴えたが、まあ少しくらいジャンヌに悲しい思いをさせてもいいだろう。


どうせ騎士団長は、夜会など貴族の行事にはあまり参加しないし。参加しても、あまり周りを見ていない。領地経営と騎士団の仕事で手いっぱいのあの人が、ジャンヌを見る余裕なんてないはずだ。


そして僕は婚約後、あえて他の令嬢と仲良くした。どの女も、自分をいかに美しく見せるかばかりで、本当につまらない。でも、こんなつまらない女たちを相手にしていると、ジャンヌが寂しそうにこちらを見ているのだ。


その顔がまた、たまらない。


どうだい?ジャンヌ。僕の気持ちが少しは分かったかい?5年間辛い日々に耐えた暁には、たっぷり愛してあげるから。そう心の中で、ジャンヌに呟いた。


そう、後少しでジャンヌを許してあげようと思っていたのに…それなのに…


まさかあんな写真を撮られていただなんて…でも、僕はジャンヌを救った恩人なんだ。ジャンヌはあんな写真を見せられてショックで僕を避けようとしているけれど、きっと落ち着いたら、僕の事を許してくれるはずだ。騎士団長だって、あの時の事を物凄く感謝していたし。


第一僕は、本当にジャンヌ以外には興味がない。口づけされた事や抱き着かれた事ですら、覚えていない程に。僕にとってジャンヌ以外の令嬢なんて、そこら辺に落ちている石ころと同じなのに。


大丈夫だ、きっとまだ間に合う。


ジャンヌは十分傷ついた様だし、そろそろ許してあげよう。これからは時間が許す限り、ジャンヌの傍にいて、今まで出来なかった愛情をたっぷり注いであげよう。


それに令嬢たちとは、今後一切の関りを絶とう。そうすればきっと、ジャンヌも許してくれるはず。


なんていったって僕は、彼女の汚名をはらしてあげた恩人なのだから…



※次回からジャンヌ視点に戻ります。

よろしくお願いしますm(__)m

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