第490話 コラのダンジョン 挑戦
その後、20分して、全員は森の中心に向けて、前進していった。30分ほどで、ダンジョンの入り口に到着。
「本当に魔獣が寝転んでいますね。」
「向こうでは温泉に入っています。」
「さっき説明したように、絶対魔獣を攻撃しないように。何もしなければ、何もしてこない。分かったな?」
「「「「はい。」」」」
*****
「1階層。夏の森。」
*****
「2階層。秋の森。」
*****
「5階層。コロッセオ。ここよ。あのコロッセオの中でゴーレムが待っているのよ。」
「よし、行くか。」
ランボルギーニが先頭で入って行く。警戒心など微塵もない。
コロッセオの中に入ると、中はひんやりとして、暗いトンネルになっている。そこを抜けると、広い楕円形の広場で、4つの四角い線が地面に引かれている。大きさは20mの正方形だろうか。その中には1体づつ岩でできたゴーレムが座っている。胸には名前が掘られていて、体の色と大さが違う。
左から、赤(ラオー)(2.2m-冷蔵庫)、
青(トキー)(1.8m-細マッチョ)、
橙(ジャギー)(1.8m-プリケツ)、
黒(ケンー)(1.9m-阿修羅像)。
コロッセオの客席に上がって行けるようにもなっているし、四角の枠の外にも近寄らないように線が引いてあり、それを越えなければ問題ないと説明書きにある。
「何なに。ラオーは力持ち。トキーは防御とカウンターの名手、ジャギーは武器の達人、ケンーは技の切れが凄いらしい。武器も使うんだろうな。」
「俺はラオーに挑戦する。」
「まてまて、殺しはしないそうだ。怪我は裏の温泉に浸かればすぐ治ると書かれている。至れり尽くせりだな。」
ランボルギーニは大剣を引っ提げて、枠の中へ入った。すると正座して腕を組んでいたゴーレムが立ち上がった。
ランボルギーニは魔力循環が高速化していることを確認してから、一気に前に出た。瞬時に大剣の間合いに入り、袈裟切りで切って落とすが、ゴーレムはすっとランボルギーニの右前に進んで来た。そこで間髪入れず、左の拳をランボルギーニの右腹を狙って打つ。ランボルギーニもとっさに体を捻り、ギリギリで躱す。
「あっぶねー。」
ラオーは一度下がると、ハルバードを持って戻ってきた。それをブンブン振り回し、ポーズを決める。
「やるな。」
周りの観戦者は固唾を飲んで見つめている。
ラオーは、ハルバードを片手で持ち、ランボルギーニの足下を薙ぐ。ランボルギーニは飛び下がって躱し、そこから逆に飛び込んで大剣で払う。それをハルバードの太刀打ちで払い、回転させて、頭上から刃が降ってくる。ランボルギーニは左に避けながら、大剣を何とか引き、自分の右半身をその大剣で護る。その上をハルバードの刃がギャリギャリ鳴りながら滑り落ちていく。ラオーはハルバードを回転させ、石突でランボルギーニの左腕の上から叩き飛ばした。ランボルギーニは二転三転して、四角い線から飛び出した。ラオーは静かにハルバードを振り回し、型をきめると、最初の場所に戻り、静かに座った。
「おい、ランボルギーニ、大丈夫か?」とダムディ隊長。
「いや、折れたな。やられたぜ。」
「裏の温泉に行って来い。よく効くそうだ。」
ランボルギーニはトンネルへと歩いて行った。
「さっきの戦い、見えたか?」
「全然。パパっと音がしたと思たら、ランボルギーニが吹っ飛んでた。俺達じゃあ、話にならないよ。」
「いいや、そうでもない。強さは相手により変化するとあるから、自分の強さに比例して、調整してくれるそうだ。便利だなー。うちの軍隊に来てくれないかな。」
「じゃあ、次は俺がやってみる。」と最年少の兵だ。
「誰とやるか?」
「じゃあ、トキーで。」
剣を抜いて、ラジャミールが四角い枠に入る。するとトキーが立ち上がる。武器は無し。
「行きます。」
ラジャミールは剣を脇に構え、走り寄ると突きを放った。トキーはギリギリに左半身を捻ることで躱し、そのまま体を回転し、180度回転して、左手の裏拳をだしてラジャミールの顎を狙った。ラジャミールは何とか頭を下げて顎への直撃を避けたが、頭頂部に掠り、ぐらりとなる。そこへ、足払いが飛んで、ラジャミールはひっくり返った。トキーは数歩下がって、ラジャミールが立ち上がるのを待つ。
「何故待つんだ?」
「うかつに飛び込むと、切られる場合があるからな。ああいう場合は距離を開けて待つか、武器があればそれを使う。トキーは武器が無いし、ラジャミールの状態が分からなかったから、安全策で待ったんだろう。」
「成程。闇雲に飛び込めば良いわけではないんだな。勉強になった。」
ラジャミールが立ち上がり、また構えると、トキーが近づいてきた。今度は剣を持っている。
ラジャミールが袈裟懸けに切りつける。そこを引いて、今度はトキーが袈裟懸けに切る。ラジャミールはその剣を受け、つばぜり合いにしてから、トキーを押し飛ばそうと踏ん張る。それを見こされて、トキーは軽く引きながら、いなす。ラジャミールはつんのめってしまい、そこを軽く剣で、背中を切られた。
「あっ!」
「鎖帷子を着ているから大丈夫だ。あの踏ん張りは俺達でも気が付いたから、もっとさりげなくやるようにしないとな。ばれていると簡単にいなされて、背中を切られるのか。気をつけよう。」
その後5分ほどやりあっていたが、ラジャミールが降参をして、トキーは静かに席に戻った。
「これは、ためになるな。」
「相手が合わせてくれるから、練習の度合いが無理過ぎることが無いし。」
そんなことを話していると、ランボルギーニが帰って来た。
「もういいのか?」
「ああ、治った。風呂で寝てるうちに治るんだから、楽でいい。飲んでも効くぞ。」
「皆も挑戦するのか?」
「ああ、4人しかいないから、順番が回ってくるまで時間がある。外に行くと練習できる場所がいくらでもあるから、そこに行っている奴もいる。」
「何でこんな施設があるんだろうな?」
「魔獣を鍛えるために在ったりしてな。」
「それはまずいな。」
「俺達は今回は特別2号のお陰で使わせてもらっているからな。マセラティなら何か知っているかもしれないが。何処にいるんだ?」辺りを見回す。
「外で弓の練習をしているはずだ。」
フェラーリとランボルギーニは外へマセラティを探しに行く。
・・・
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
「もっと離れてもいいな。」
「そうね。まだまだ行ける感じ。」
「的を動かしてくる。」とロータス。スサッと的まで移動して、的をもって300m程離れて、パッと戻ってくる。
「見えるか?」
「見えるわ。その練習も2号がしてくれたの。」
シュ、ドン
流石に少しそれるわね。ど真ん中から指半分ぐらい逸れたわ。
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
「修正できたかしら。」
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
「うん。大丈夫みたい。」
「次行くか?」
「ええ、お願い。」
的は400mの位置に。
シュ、ドン
「あー外れた。」
シュ、ドン
シュ、ドン
「よし、よし。」
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
「もうちょっと上を狙うべきか。」
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
「良さそうね。」
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
「うん。大丈夫だわ。」
的を500m先に移動。
シュ、ドン
シュ、ドン
「外れたわ。」
魔力循環を確認、魔力を弓に多く通す。
シュ、ドン
シュ、ドン
「当たり。」
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
「もうちょっと左上。」
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
シュ、ドン
「出来ちゃった。500m。」
「じゃあ、俺が500m先にいるから、射ってくれないか?俺はそれを切り落とす。」
「危なくないかしら?」
「大丈夫だろう。即死じゃなければ、温泉で治る気がする。致命傷にならなそうなところを狙ってくれ。」
「まあ、そうね。大丈夫でしょう。魔力の矢だから切るときは勿論剣に魔力を通しておかないといけないからね。」
「分かった。」
*****
ロータスが向こうで手を振っている。マセラティも手を振り返す。ゆっくりと構えて、
シュ、キン。
無事に切れたみたいね。
シュ、キン。
シュ、キン。
シュ、キン。
シュ、キン。
もっと間隔を早くしてみましょう。
シュ、キン。
シュ、キン。
シュ、キン。
シュ、キン。
やるわね。次は矢の速さをあげてみよう。
シ、キン。
シキン。
シキン。
シキン。
あ、ロータスが手を振ってる。スタタタとロータスがやってきて、
「次は段々近づいて行くから、倒すように射ってくれ。」
「怖いわ。」
「大丈夫だ。」
「300mまではまあいいけど、そこで止めるわよ。」
「先ずはそこまででいい。」
ロータスが手を振って用意ドン。
シキン。
シキン。
シキン。
シキン。
「もう300mか。しかし問題だわ。ロータスレベルの人種には通用しないということだから。勿論爆発する矢にすれば、話も変わって来るけど。
あ、手を振ってる。もっと射ってくれって感じね。
やるわよ。」
シキン。
シキン。
シキン。
200m。ちょっと一度真剣に射ってみようかしら。魔力を多く通して、
シカシュ。
「えっ?嘘!当たっちゃたの。」
マセラティは走ってロータスの所へ行った。
「当たっちゃたの?」
「ああ、切り損ねた。右の脇腹に掠った。」
「掠ってないわよ、抉れてるじゃないの。すぐに温泉よ。」マセラティはロータスを背負うとそのまま裏の温泉に飛び込んだ。
「うぐっ、沁みる。」
「我慢しなさい。」
「やはり、速いな。お前もっと速く射れるだろう?」
「段々出来るようになってきたのよ。悪かったわ。急に速さを変えて。まさか当たるとは思わなくて。」
「いや、いい。いい練習になった。だんだん痛くなくなってきたし。」
10分程浸かっていると、傷は無くなっていた。
「良し、治ったぞ…このお湯をポーションの瓶に詰めたら売れるんじゃないだろうか。」
「確かにそうね。そんな簡単にいかない気がするけど。今何時?」
「もう夕方だと思うが、ダンジョンだから、日が落ちないのか。腹が減った。」
2人で温泉から上がり、ドライで乾かしてから、コロッセオに戻るときに、フェラーリとランボルギーニに遇う。
「練習は終わりか?」
「ああ、腹が減った。」
「そういえば、もうそんな時間か。」
「明るさが変わらないから、気が付かないのよね。」
「飯にしよう。」
「2号は作ってくれないわよね。」
「俺達だけじゃないからな。」
「そう言えば、この施設は何のためにあるんだ?魔獣の為か?」
「そうだと思うわ。魔獣は保護対象だって言ってたから。魔獣はここに自由に来れるのよ。でも、この階層には来ていないようね。」
「魔獣が強くなる可能性があるな。」
「それは仕方が無いわね。ダンジョンマスターがそう決めたんなら。」
「ちょっと会議を開いた方がよさそうだ。」
「飯の後にしてくれ。」
「ああ、分かった。魔獣は食べたらいけないんだよな。」
「保護対象よ。手を出したら、手を出されるって言ってたし。ただ、植物や生物は食べてもいいんだけど、動物は見ていないから、植物は採ってきてもいいはずよ。」
「まあ、軍の料理班に任せようぜ。頼まれたら、何かすればいいよ。」
「「「賛成。」」」
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